MARIA
8
一学期最終日、葵がいなくなって六日目。今日は終業式。式の間、眠気を誘う校長の長話を左右に流して聞いた。
早く終われ、と願いながら何気なく二年のいる座席を眺める。例え葵のクラスが分かっていたって、これだけの人数が集まっている場所で葵の姿を捜すことはほぼ不可能に近い。
だから期待も何もなく視線を彷徨わせていた時。
「………ッ!」
今すぐにでも胸倉に掴み掛かりたい衝動を、無理矢理自分の中に押さえ付ける。
俺の瞳に映り込んできたのは、俺が本当に求めていた人物ではなく。
あの日、機械越しにしか話をしなかった、吉野 敬史。
俺を支配しつつあった眠気も完全に吹っ飛び、式が終わるのを今か今かと待つ。
葵と一緒にいる時はあんなに時間が過ぎるのが早いのに、それ以外の時はどうしてこんなに遅いのか。
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