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だからどうか
愛しています、
愛しています







人は生まれた時から孤独なのだ
長い輪廻、来た道も行く道も只々独り
所詮生まれ落ちた時から自らの足でもってこの世を生き抜かねばならないということ
求める手に振り向くな、救いの手を差し出すな、人にすがりつくな
結局其処にあるのは自分自身だけなのだ
それでも僕は構わないのだ。だってこの続く世界に何時かはまた独りになるのだから。求めるだけ無駄で馴れ合えば悲しくなるだけ。もう二度と貴方に巡り逢えぬのならば最初から出逢わない方がいいと、幾重にも重なる悲しみの記憶がうっすらと語りかける

大丈夫、僕はずっと独りだった。人を求めることは諦めた。悲しみに絶望するのはもう止めた。何れまた独りに戻るこの心など放っておけばいい

もう要らない、僕が只欲しいものはもう要らない

人は生まれた時から孤独なのだ
永遠に変わることのない不変の孤独
だからこそ探してしまうのだ傍らにある優しさを。この儚い命の間に出逢うその手を。


僕は出逢わない筈だった出逢える筈などなかった。けれど出逢ってしまった
変わることのない不変の孤独の傍らにある不変の貴方の手


もう二度と貴方に逢えないのならば何故出逢ってしまったのだろう、とただ嗚咽するこの心が、気持ちが。


嗚呼それでも愛しいと、この孤独が泣くのです


「僕の側に居ればいい。生まれ変わることなど出来ない位に。僕が君を手放す日などもう来ないよ。だから君はもうこの手を離せなんかしない」


伸ばした手は絡みとられてしまってもう逃れられない。そう、逃れられないのだ。なんて幸せなこと!

「もしも僕の隣で貴方の孤独が癒えるのならば、もしも二人が一つになる日まで側に居てくれるのなら。ねぇ恭弥くん、」

溶け合ってしまって一つになったのならもう孤独なんかではないでしょう?


その時まで、触れた指先の体温に融解してしまえる何時かが来る日まで、






だからどうか君の側に



雲骸










この身、朽ち果ててしまう日が来るまで






嗚呼、あったかい


忍の世界は冷たくて暗い。影を生きる為に自らその温もりを棄てた俺達
大事なものは恩義でも忠義でもない。在るのは只、己れだけ
故に忍であるのだ。感情を棄てる痛みを知るのは自分らだけで充分
この小さな主に出会った日から更に強く、強く思うのだ



「さすけ!どこださすけ!」
「ああはいはい、さすけは此処にいますよ弁丸さま」

うりゅ、と潤んだ瞳で必死に名を呼ばれ、出ていかない訳にはいかない
お陰様で自慢ではないがこの城に来てから一度たりとも仕事を成功させたことはない。外に出ていかなければならないものは即却下、かといって内職をしようにもする暇すら与えられない訳で

もはやこれでは忍ではなくて女房ではないか、と幾度溜め息をついたことか

「弁丸はもうひとりは…いやなのだ」
「わかってますよ。それにちゃんと俺は来るでしょ?」
「でもずっと居てはくれないではないか!」
「あー…それは俺様にも仕事ってもんがあってですね、」
「父上だってそのように言っては帰ってこなくなってしまった!」
さすけもいつかはそうなるのか…?と小さな手が俺の着物の裾を強く、握った

この手を振り払うのは簡単なのだ。唯一の主なんていらない。守りたいものなんていらない。愛しいと思うことは嫌だ。強く思えば思う程戻れなくなる。取り返しがつかなく、なる


「さすけ、さすけ」

でも、どうして、


「さすけはずっと弁丸の側に居てくれないか」


こんな強い思いを振り払うことが出来ようか


「、はい。ずっとお側にいます。名を呼んでくれる限り、いつまでもいつまでも」


そういって流れた自分の涙が温かくて何故か非常に不思議だったのだ





旦那との約束通り俺は今も旦那の元にいる。生涯只一人の主。もう、泣いて名を呼ぶことはなくなったけれど、今も俺を呼ぶのは旦那の声だけ。振り向くのも旦那の声だけなんだ

触れた肩の優しい体温が相変わらず変わらない心地好さで小さく目を瞑る。知り得る筈のなかったその温もりが、与えてくれたその優しさが、大事にしたいと思えて今も昔も只俺の世界は旦那だけ



きっと、きっと何時か旦那の為にこの命を棄てる日が来るのだろう
それは守って欲しい訳ではない。死ぬなと言って欲しいのでもない

只、只々こうしてその旦那の体温が側に在ればいい。何時までも俺の名を呼んで、そして笑って欲しい


「あの時の約束は未だ有効?もし切れてしまう日が来るなら今度は俺様が約束するよ。だから、ねぇ旦那、」


アンタだけの忍は、アンタの笑顔だけを望んでは止まないんだよ

本当に他には何も要らないから、





だからどうか君の側に



幸佐









貴方の側に居させて下さい







凄く、似ていると思った。初めて出会った時の不思議な感覚。後から考えても全然接点もないし、むしろ正反対なんではないかとも思える位なのに

面倒見がいい丸井先輩は二年唯一のレギュラーの俺に構ってくれるし何だかよくわかんないけどずっと一緒に要る時間が増えていった


「なぁ赤也、付き合わねぇ?」
「へ?」

何時もの帰り道何時ものテンションで何時ものようにはいかない言葉を吐かれた。からかわれてるのかと思ったけど丸井先輩はそんな悪趣味なことを冗談で言ったりはしない。要はそんな大事なことは冗談でなんか言う人ではない。つまりは、大真面目な訳



「かかか、考えさして下さいっ!」

そのまま脇目もふらず家まで全力疾走。ベッドにダイブしたまま必死に無い脳みそフル回転。気がついたら朝だった


何となく気まずい部活中、丸井先輩は何時も通りに接するけどガキでバカな俺は優しい先輩を避けて部活は早退、またまたベッドにダイブした

その次の日目が覚めたら体がだるくてとうとう知恵熱を出した俺は情けなくてちょっぴり泣いた

丸井先輩とマックで楽しくダベる夢をみて、酷く寂しくなった。何でこんなことになったんだろ。って。そして開いた部屋の扉。、丸井先輩だった


「せん、ぱい」
「優しい優しい先輩様が病気の赤也くんにアイス買ってきてやったぜぃ」

だから食えよって笑って俺の頭を撫でた先輩。本当に何時も通り、でも俺の喉がひゅう、と鳴って声がうまく出なかった。ありがとう、それを笑顔で言えばいいだけなのに


そんな俺の様子をみた丸井先輩が笑って、小さく、本当に小さく、


「…あの言葉は忘れていいぜ」


ごめんな赤也、ってやっぱり笑って言う先輩に俺は柄にもなく泣きじゃくった。ごめんなさい丸井先輩。先輩にそんな風に言わせるつもりはなかったのにごめんなさい


それから俺達は一緒に帰らなくなった。側に居なくなった。俺は寂しくて仕方なくなった。この気持ちを伝えたくて、でもわからなくて、そしてもっと寂しくなった



先輩の優しさとか笑顔とか、ふざけた時のお茶目な目元とか、先輩の俺を呼ぶ声とか、俺にはないものがいっぱいあって、だから寂しくて、寂しくて、切ない



また、丸井先輩の夢をみて、繋いだ手が一つになって離れない夢、そして俺はやっと気付いた




「丸井先輩!」
「赤也?」

帰り道一人で歩く丸井先輩を呼び止める。俺達はあの日から一人で帰っていた。だって隣りを歩くのは、もうわかってる

「俺、初めて会った時、似てる、って思ったんです。でもむしろ正反対で、何が似てるって思ったのかもわかんなかった。でもでも、先輩と離れてみてやっとわかった」


丸井先輩になくて俺にあるもの
丸井先輩にあって俺にないもの
不完全な俺達が合わさって、やっと一つのものになれるんだ


「俺と先輩は足りないものを求めてたんだ。だから似てるって」

離れてたら駄目。二人が一緒に居るから一つになれる。この気持ちをなんていうのかもうわかってる

「じゃあ赤也、それはつまり、」




「丸井先輩、が好きです」


赤也!そう名を呼んで先輩は俺を抱きしめた。嬉しくて俺はちょっぴり泣いた



ごめんなさいごめんなさいもう離れたりなんかしません。だからたった一つお願いさせて下さい


「先輩が辛い時は何も言わなくていいっす。先輩が怒ってる時も口きかなくていいです。でも離れないで。どんな時でも其だけ。ねぇ先輩、」



辛くても怒っててもいつかはまた頭を撫でて、笑って?




だからどうか君の側に



ブン赤












09.07.11

Thanks 2 anniversary!




あきゅろす。
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