[通常モード] [URL送信]
地上から300m(跡+日)





空が、高い




まるで真夏の太陽のようで、でも眩しさもあのけだるい暑さもそこにはない

ゆっくりと雪解けを待つ世界はまだ銀色


コートの整備もなかなか大変で毎日気が抜けない

そんな練習を終え、誰も居なくなった部室で部誌を書く

跡部さんの字ははっきりとして堂々とした字
そこに増える俺の字


わだかまったままの俺の心は外の色と一緒
何の色も見えない


あの素晴らしい部長に憧れ、そして越えたいと願ったのは何時のことか

あの人は最後まで俺の壁であってくれた
けれど不意に、突然に、引退という形で消えてしまった

この氷帝の頂点に立った俺
けれどあの人を越えていない

心がぐちゃぐちゃと乱れていく




「日吉」



部室に響いたその声


「跡部、さん」

「何やってんだ」

貴方の事を考えていましたなんて、


「後始末ですよ。今日も雪が深くて大変でした」
「あぁだいぶ積もったからな」




どうして、どうして貴方の声を聴いただけでこんなに安心するのだろうか


懐かしむように部誌を捲る跡部さんは笑っていた


「俺は、まだあなたを越えていないのに。あなたはもうその部誌を書く事はないのですね」

何を言っているんだ、と思った
でもとまらない

「俺は強くなってなんかいないのに。先輩達は居なくなってしまって俺は何を目標にしたらいいかわからない」

握り締めた拳が痛い
真っ直ぐに俺をみる跡部さんが痛い


「ねえ、俺はどうしたらいいんですか?」




跡部さんは俺から一度も目を逸らさない
いつだってこの人は真剣に話を聴いてくれる





「俺は、」


色がぽたりと広がった



「お前を裏切らない」



ただ、そう言った


けれどその中の意味を俺は理解した
何故だかわからないけど真っ直ぐに伝わった



「本当に、貴方は凄い人ですね」


拳にはたりと雫が落ちた

「日吉、」

「何でも、ないですよ」

そうか、と跡部さんは俺の頭を一度だけ撫でた




きっともうすぐ春が来る
その時俺達は貴方達を失うけれど


また追い付く日が来る



そしたらまたあの夏が来る



きっと、空は高い








Fin







ーーー
意味もわからず跡日

熱に浮かされてシリーズを日記でやっていたけどあのシリーズの第四段って感じ
まあキーポイントが入ってないから違うかもしれんが

日吉がわからないからRちゃんぽくなった←


.

[←][→]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!