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おとめ
ベッドの中で彼を見上げるのは、初めてかもしれない。

異物感と揺れで、吐き気がする。口には出さないけど。慣性の法則でふぁさふぁさと彼の柔らかい髪が僕の肩や首をなぞるのは、心地良いのだけれど。快感よりも、痛みやその他の感情が表に出てきてしまうあたり、僕には受ける側のセンスはないらしい。

最初に彼を押し倒したのは正解だったと、過去の自分を誉める。本当は行為に集中すべきなのだろうけれど、如何せん辛い。何かで気を紛らわせなければもたないよ、こんなの。

「き、もち…ィイ?」

苦しいものだから、喘ぎ声らしきものは出る。ひっきりなしに、だから何か言葉を発してもそれなりに聞こえると思うのだけれど。今日限定のこれは、彼の為の行為なのだ。彼が気持ち良くないと意味がない。

「えぇ、とても」

吐息と共に出た言葉に男独特色気が含まれていて、ひと安心する。無駄な体力を使えるほど、自分はもう子供ではないから。

中に感じる熱に、そろそろかと予測をしてキスを仕掛ける



発端は自分の発言だった。勝手に決めた位置付けに、彼は文句を言わなかったけれど、僕だったら別れ話にまで発展するような大問題だ。だから、きっと、彼も心の中では不満を持っているはず。
だけど、自分が女役にまわるだんて通常の僕だったらできない。いくら彼のことを大切に思っているからといって、これは、プライドの問題だ。

だから告げた
今日ならば、と。


案の定頷いた彼は僕を寝かせ、今に至るわけだが。流しこまれた液が伝う、腹のモノは自らの出したモノだが

「お風呂、入りますか?」

腰が痛い汗で気持ち悪いと文句を垂れていると彼はそう言った。掻き出すのなんて、自分ではできない、というかしたくない。人に差し込む感覚と自分では違うから。でも、彼に処理してもらうのもそれはそれで考えるものがあって、

結局宥められつつ、お風呂に入り全身を洗って貰い体を拭いてもらい、髪を乾かしてもらっている。

「熱かったら言ってくださいね」

でろでろに甘やかしてもらうということは、こんなにも心地良いものなのか。プライドや意地を腰の痛みを理由に宥めることで、こんな一時が過ごせるのなら、今日のような行為も、悪くはないのかもしれない。

新しいシーツがかかったベッドに寝転ぶと、先ほどの記憶が蘇ってくる。無意識に力を入れてしまう孔。熱いものを打ちつけられる感覚は、気持ち良いものではなかったが、不快ではなかった。
寧ろ、

「今日は、ありがとうございました。」

洗濯をセットして帰ってきた彼が言う。普段の彼は、美しい部類な筈なのに、今は何故か

「特別なんだから、これくらいして当然でしょう?」

邪念をはらって目一杯甘い声を出す。

「誕生日、おめでとう。また来年の今日にだったら…、抱かせてあげてあげる」


もっともっと、僕のことを好きになって
僕なしじゃいられない程になるまでに


君にずっと、
そばにいて欲しいから



そんな願いを内に秘めて




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