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おうし
腕まくりをした腕が机に料理を並べていく。

その姿を覗き見しながら、冷蔵庫から作り置きしておいたサラダを取り出した。

「これで完成、かな?」

「おう!あとは小皿だして貰えるか?俺は飲み物を用意するから」

ウーロン茶でいいよな、と言いながら手を洗う一樹。手を拭いたら、その手首はカーディガンに隠されてしまうのだろうか。このままでは勿体無い気がして、横を通り過ぎて奥の棚へ向かう手首を捕まえた。

「どうした?」

「一樹の手首、綺麗だよね」

視線を僕より少し低い一樹の顔へずらす。口の少し開いた呆けた顔を見て、微笑みが零れる。手首と、右の頬左の頬、馬渕に額、それと唇の柔らかさを少し堪能してから肩を抱いていた手を離した。

「…もう、いいのか?」

熱を帯びた吐息と共に発せられた言葉は、とても魅力的なものだったけれど。

「せっかく作ってくれた料理を、冷ますわけにはいかないからね。」

少しの我慢がきっと素敵なスパイスになる。
それに、

「そう、だな…食うか!我ながら良くできたんだぜ。腹いっぱい食べろよ」

強がる愛しい人は、焦らされてからの弾ける姿が最も艶美なのだから。向かい合いで席に着くと、ふわりと香ばしい香りが鼻を通って空腹を思い出した。



いつもよりも多い量が胃袋へ入っていったのは、目の前で優しい顔をしている、一樹の姿があったからに違いない。




あきゅろす。
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