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うお

出会った頃と同じように月子には甘いあいつ。好きになった人には、常に紳士でいたいと言っていた過去もあった。

そのあいつが、楽しそうに俺に生意気を言って意地悪く笑うところを見るのが、俺は嫌いでなかったりする。だけど、なんだかそれも俺としては少しかちんとくるものがあるわけで

「哉太、手出して」

「ん?なんだよ」

「いいから」

「わけわかんねー奴だな、ほらよ」


手を差し出すと、日本人とはまた違う白い肌がそっと触れてきた。どくどくと、期待を表す心臓をどうにかしたい。顔にあらわれていない事を祈った。


「…ふ」

期待した?と囁かれてカッと熱くなる。
頭がじゃない顔が、だ

それでも手を引くことをしなかった反応に笑みを濃くしたこいつは、俺の顔を見ながら、その指にくちづけを1つ。

「哉太は、指輪が欲しかった?」

爪先にキスをしてひと舐め、優しい顔でそう言った。

「べつに、お前がくれるなら」

なんでも嬉しいからとは言えなかった。途中でその口でも塞いでくれればいいものを、こいつは真っ直ぐと見つめてくるものだから、

続きが口にできなくて、無言が余計に恥ずかしさを増させる。その間も視線を外さない目の前の似非紳士。
ちらりと様子を伺うと、体を引き寄せられた。


「…びっくりした、」

「哉太ってばいきなり素直になるから」


そう言ってくちづけてきた頬が赤い。それが予想以上に心臓に来て、気がつけばその赤い頭を引き寄せて自らのくちびるを必死に押し付けていた。






「はい、哉太。誕生日おめでとう」

夕食とケーキを前に差し出された綺麗な包装。

お礼を言って包みを開く、中身はガラスケースに入った小さな花と俺が食べたがっていた期間限定菓子だった。
なんと言うか拍子抜けをする。

「哉太って自分の持ち物にこだわりがあるでしょ?」

「ん、ああ確かに」

「本当は身に付けられるものにしたかったんだけど、まだ哉太の好みを把握するほど、僕等一緒にいないから」

だからせめて、哉太の部屋にずっと置いておけるようなものにしたかったんだ。と、あいつはそう伝えてきた。

それを聞くとなんだか手の中の花が愛おしくなってきて

「…お前、ほんといつもいつも、クサいことするのな」

花だとか女っぽいもの誰が、とか一瞬でも考えたのが嘘みたいだ。本当にこいつがくれるものはなんでも嬉しい、大切な物になるんだと、思った。

引き出しの1番上の、
1番手前にある
真っ赤なバラの飾り物

取り出しては、その色にお前のことを思い出していたんだと、いつか、笑って伝えられる日が来るといい。
そう、願った。




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