みずがめ
朝、去年の今日を思い出してちょっぴり凹んだ。
新着メール一件
にらめっこ対決をするも決着がつかず部屋を出た。
そらそらと書記が開いてくれた誕生日会おっきなケーキを食べてプレゼントを貰って心がほこほこ幸せいっぱいなはずだった。
昼休みも終わり教室へ戻る。もう見慣れたはずの、1年のときより少ない人数で受ける授業。
「いつまで寝てる気?授業は終わったよ」
「宿題提出、明日だからな」
「翼」
「はやくしなよ一緒に帰るんだろ?」
寂しい
「良い子にしててよね」
悲しい
「行ってくる」
梓が、いない
「ハッピーバースデイ、翼」
去年のように誕生日を祝ってくれる梓がいない。
そばにいない。
「ごめん、急に練習室キャンセルが入ったから繰り上げで僕が入ることになった。」
「だから、予約してた新幹線に間に合わないんだ。」
しょうがない
梓の夢の為だから
俺は、我慢をしなくちゃいけない
寂しいなんて伝えちゃいけない
生徒会室で研究に没頭する。寂しさを忘れたくて、でもどう形にしたらいいのかなんてわからなくて、
聞き慣れた爆発音が部屋に響く
こんな初歩の電気配線を間違えるなんて、今日は調子が悪いみたいだ。上手くいかないことにも悲しさを覚えて、涙が出てくる。とまらなくてとめてくれる誰かもいなくて、
「あずさ、あずさ…」
「なに?というかこの部屋煙たいよ、体に悪い」
「え、」
「あーあ、やっぱり泣いてた。」
残っていた涙を拭われた。
「部屋で待ってたのに全然帰って来ないし、」
「ちゃんと人の話聞かないし、何してるのさもう」
なんでとかどうしてとか言いたいことはあるのに、あうあうと言葉にならない声にしかならない。抱きしめてくれる小さな体があたたかくて、匂いが懐かしくて、さっきとは違う涙が溢れてとまらない。
「ほら、もう泣き止んで部屋に帰ろう。誕生日会、やるんだろ?」
机に並べられた手料理を見るまで涙がとまることはなかったから、梓からプレゼントされたキスは俺にとっては甘かったけど、梓にはしょっぱかったかもしれない。
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