偽りのライセンス無携帯
「直獅」
待たせたな、と眉を下げて寄って来る上司。
俺の、上司
俺にとってあなたを待ってることは苦ではないのだから。寧ろ幸せを感じる…という事実は少し寂しい気もするけれど。
そう、あなたに伝えられたらよかった
「気にしないで下さいよー、全然待ってないです」
琥太郎先生の車に向かいながらいつもの会話。
助手席に座る、横のあなたに一点集中。この時間も、幸福。
「それならいいが…お前はいい加減免許をとったほうがいいぞ。」
俺はお前を乗せるのは構わないが、いちいち俺を待ってるのも時間がもったいないだろう?
運転中の琥太郎先生は、いつもの数倍格好良い。だから、今の台詞は聞いてなかったことにしようと思う。
あいつが入学して
水嶋が来て
琥太郎先生は前よりも
ずっと笑うようになった
それは、俺にとってもすごく良いこと。のはずなんだけどなあ
「…直獅?おい、直獅」
「、え?」
「まったく目を開けたまま寝るなよ」
微笑むあなた
ごめん
声には出さず呟いた
幸せな今だけれど、我が儘で餓鬼な俺は、我慢もしない上に本当のことを伝えられずにいます。
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