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中紅花


「棗君」

「…」

「無視は酷いんじゃないかなあ。折角、君のためにと思って待ってたのに」

「要件を言え」

「君、知ってる?美玲ちゃんが、今シングルに降格処分を受けてること。」

「だからどうした」




「処分はね、丁度君が脱走している時に決まったんだよ。…悪戯をした上級生と一緒にね」



***


次の日、佐倉蜜柑さんは正式に入学を果たしました。
そして…

転入生恒例のパートナー選びが…

「日向棗君です」

傷だらけで罰則面を付けた日向君に決定しました。
佐倉さんが星なしという理不尽な決定がくだされた日の放課後

私は毎度のことのように日向君を探していた。
ぼんやりとわかる、彼のいる方向に進むと、やっぱりいつもの木の下で寝っ転がっている彼がいた。

罰則面は外れていたけれど、体の傷は残っている。
痛々しい傷

「痛そう…」

思わず口に出た言葉
それと同時に、彼に伸ばしていた手が掴まれる。

「お前、この怪我どうした」

起きていることよりも、ばれていたことに驚いてしまった。

上級生とのケンカでついた傷はミミズ腫れは引いたものの、痕がまだ消えない。
黙っていると、もう1度答えろと言われた。

「…日向君には教えてあげない」

それだけ答えて、私はアリスを使った。

これで、日向君は痛くない。私が日向君にできることは終わった。
いつものようにいなくなると思っていた日向君は、舌打ちをしただけで私をじっと見つめている

いつもと違う状況に、私の心臓がドクリと音を立てた

何かある
そう期待してしまったのだ、我が儘な私は

「お前…いつまで俺のことを苗字で呼ぶつもりだ」

顔が赤くなるのがわかる。これは夢だろうか
なんて幸せな夢だろう

「え…」

やっとのことで返したのは、素っ頓狂な声

「名前で呼べ。いいな」

現実か夢かで戸惑う私を置いて、去って行った彼は、とんでもない爆弾を落としていきました。



ぼーっと先ほど出来事を考えてはにやにやするというループを抜け出した頃には、もう夕食の時間で。
シングルのご飯なことを皆にからかわれながら食事を終えてシングルの部屋に戻る。

と、不思議な贈り物が机の上に置かれていた。

「苺…」

窓は空いていてカーテンがは風に揺れる。
窓のカギを開けたままにしておいたのは自分で…でも誰が…

深く考えるのはやめて、有難く享受することにした私は、少し物足りなかったお腹をいっぱいにして眠った

誰からかわからないプレゼント
自分の良い方に考えて、にやけて…

「なつめくん…」

愛しい彼の名を呼ぶ練習を1人した、そんな夜




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