花粉症宮地たん
「紅茶はアールグレイでいいかな?」
「あぁ、すまなふぇ…っくしゅん!」
春が感じられるようになってきたこの頃、愛しの恋人について新しくわかったことがある。
「辛そうだね、花粉症」
「む、まだ3月なのにこの調子だからな。先が思いやられる…」
そう言って宮地くんはチーンッと勢いよく鼻を噛んだ。朝からずっとこうだから半ばやけになっているみたいだ。そんなところもすごく可愛い
「目、腫れちゃってる…擦ったの?」
顔に手を添えればびくりと波打つ肩。本当、可愛いなあ
わたわたする彼を置いて紅茶の用意に向かう。それと、彼の為に作った甘いシフォンケーキ。
「はい、召し上がれ」
「ありがとう。いつもすまないな」
目を伏せてそう言われた。宮地くんは、いつもそう。可愛くないことを言う口は塞がないといけないね、その前に
「宮地くん、あーん」
「…ぁー、ん」
最近の、あーんを素直にやってくれるようになった。寂しい時に抱きついてきてくれるようになった。本当可愛くてしかたがない。そんな大好きな恋人が、花の精に捕らわれて苦しんでることが、最初は物凄く嫌だったんだけど…
「ごめんな、東月」
「ん?何が?」
「せっかく作ってくれたのに、しっかり味を感じられなくて…」
「そんなこと気」
にしないで
口にしようとした空気は留まったままだ。原因は、薄く目を開いたままの宮地くんの唇。
「…こんなに、美味しいんだ。自分で食べたら、わかるだろ?」
鼻声に涙目プラス染まった頬だなんて、美味しいに決まってる。
苦しむ彼を見ると悲しくなるけれど、でもやっぱり
花粉さん、ありがとう
宮地くん
謝るのはね、俺のほうなんだよ
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