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眠りにつく

がたんごとんの音中、右に吊革左に参考書。

この空間が人で満たされるまでは、このまま不安を和らげるだけの行動をするつもりだ。緊張している気はなくとも、自分は意外と怖がりなのだと、だから少しだけ自分にも心配を向けてくれと、あいつは言った。
もう、1ヶ月も前の話だ

気持ちは同じだ、通じている、だなんて本当に言える奴なんていないと思う。皆口先だけ、上辺だけ。相手をというよりは自分がそう思いたいから口にする言葉の1つだろう。

そんなことを考えながらも、俺は自分とあいつがきちんと想い合っていると思い疑わない。あいつは待つことのできる奴だ、それは自身もそうだと自分では思っている。思い込んでいる。

本を閉じて奥に流された。吊革に届かない真ん中の空間。仕方なく周りを見回すと、席につき眠る学生の姿。

がたんごとんがたんごとん、急に音が帰ってきたような感覚。何故か連想した下駄の音。
眠ったままの学生達

意識は過去を振り返ることに向かった。強く残っているものだけが断片的に思い出される。もっとたくさんの時間を過ごした筈なのに、記憶はほんの少ししか語ってくれなかった。遠出した帰り2人で眠ってしまって乗り過ごした事実は覚えているのに、それに気づいた、あいつが、誉が、どんな顔をしてなんと俺に語りかけたのかも、俺は覚えていない。


寂しく感じた会いたいと思った。勉強と時間に追いかけられていてこの1ヶ月思うことはなかったのに。今はこんなにも会いたくて怖くなっている。

感情は誉にしか向いていないのに、体はしっかりと現実と向き合っていた。
電車を降り、構文と誉を繰り返しながら事前に調べていた道を歩く


試験を受ける気は勿論ある、緊張もしている
だけど誉を想う気持ちも、確かに、ここに存在していた。




あきゅろす。
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