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孤独な月を 神は笑った
DUE



2人は、ライバルであり友人であり、良き理解者であった。互いを信頼し、2人の間には確かな絆があったのだ



それが壊れ始めたのは、いつだったか。先に怖そうとしたのは、どちらだったか。真実を知るのは、たった1人。決して事実を話そうとはしない魔女だけだった

















「ジオ、自警団はどうだ。順調か?」


「…グロリアか。これが順調のように見えるか?」



彼らの出逢いは、女が男に声を掛けた事から始まった。暗い影を負ったその男の名はジョット、イタリアの片隅で生きる、どこにでも居るような青年だった


女は名を、グロリアと言った。そして、自分は“魔女”だと名乗った。初めは有り得ないと信じていなかったジョットだが、今ではその言葉を疑いもしなくなっている



目の前で見せ付けられた超常現象の数々は、彼の知識と常識では説明できなかった。物語の中にでしか生きられないと思っていたその存在に、ジョットは少なからず救われていた


全知全能が神の代名詞であるなら、グロリアは地球上で最もそれに近いだろう。グロリアは荒れ果てたこの土地を立て直そうとするジョットの、最初の理解者だった


何の変哲も無かったジョットを巨大な組織の首領に仕立て上げたのは、他でも無いグロリアだ。壁にぶつかった時は的確なアドバイスをし、彼が躓きかけたら誰よりも早くその身を支えた



「…仲間がまとまらぬか」


「ああ。仲間割れとまではいかないが、一体感が無い。これでは悪に立ち向かうどころか、いつか内部分裂が起きそうだ」


「人間とは無意識の内に他人の上に立とうとするものだからな、他人よりも権力を持とうと躍起になっているのだろう」


「……何か、助言をくれないか」



ジョットは行き詰まると、いつもグロリアを頼っていた。弱音を吐いたり他人に弱味を見せる事が許されない彼の、唯一の拠り所がグロリアだったと言っても過言ではないだろう


永い時を生きて来たグロリアは、常にジョットの助けとなって来た。望まれるなら、その能力を惜しむ事はない



「そうだな、…信頼できる部下を作ると良い。お前を信じ、常に支えてくれる部下を」


「俺は部下を信じているし、それなりに信頼されていると思うが…?」


「幹部を作れという意味だよ。数は6、おまえが命を賭せる相手を選べ。各々に明確な役割を与え、責任を分散しろ。全て自分で背負おうとするからおまえは駄目なのだよ」


「…そうか、ならばその1人目はグロリアだな」


「なに…?」


「俺の下につくのは嫌か?グロリアとは今後も良好な関係で居たいからな、グロリアさえ良ければ相談役でも…」



ジョットにはグロリアが必要だった。それは良きパートナーとして、最高の理解者として、頼れる友人として、不可欠な存在だったのだ


思いがけないジョットの言葉にグロリアは目を丸くしたが、しばらくしてふっと柔らかく笑った



「生憎、他人と生きる事には慣れていなくてね。何かに縛られるのも性に合わん」


「…やはりか」


「ああ。だが、いつ如何なる時も、わたしはボンゴレの為に生きよう。わたしの命を賭けて、魂に誓う」


「本当か…!?」


「わたしは嘘は言わんよ、人間と違ってな。もしおまえが居なくなっても、末代までも、求められれば駆け付けてやる」


「グロリアがそう言ってくれるなら安心だな。約束だぞ」


「ああ、任せておけ」



言霊とは良く言ったもので、グロリアはこの約束にその先ずっと縛られる事になる。約束とは契約、契約とは呪縛なのだ



グロリアはこの頃もまだ、幼かったと言っても過言ではない。手に入れた巨大な能力を、100パーセント理解し使役できていなかったのだ


口に出しただけで未来が変わるなんて、人の運命を変えてしまうだなんて、まだこの頃は知らなかった










未来永劫
この命を賭して
ボンゴレの為に在ろう











その『約束』から数年後、ジョットの作った自警団はボンゴレファミリーと名を改め、裏社会で暗躍していた


イタリアで随一と言っても過言ではない程に成長し、誰もが恐れ敬うようになった



しかしそれと同時に、反抗する連中が出て来たのだ。権力に歯向かい、己れこそが1番だと豪語する連中が


各々の力は大した事が無くとも、それが集まれば巨大な脅威になり得る事をジョットは良く知っていた


1つずつ潰していくにはあまりにも時間が掛かり過ぎる。その対処に困っていた時、あの魔女が現れたのだ



「久方ぶりだな、ジオ。相変わらず有象無象共に頭を悩ませているみたいじゃないか」


「グロリア…!!ああ、お前が来てくれるのを待っていたよ」



グロリアは住処を固定せず、自由気儘に色々な所で生活していた。ジョットからグロリアに連絡を取る事は難しく、気分でふらりと立ち寄ってくれるのを待つしかないのだ


ジョットはグロリアに言われた通り、自分の腹心を6人作った。誰も彼もが曲者だが、ここぞという時何よりも頼りになる強者ばかりだ



「……人間が大きな力に抵抗したがるのはいつの時代も同じだな。非力なくせに自分だけは違うと過信している」


「聡明なグロリアとは違うからな、人間なんてそんな物だ」


「で、わたしにどうして欲しいんだ?対価を払うなら、おまえの願いを叶えてやるぞ」



グロリアはこの時、初代ボンゴレに“超直感”なる能力を与えた。グロリアの眼から派生した、見透かす力の一部だった


この能力はその血に溶け込み、ボンゴレが継承される条件として必須の物となる。世界で唯一の魔女と、巨大マフィアに確かな関係性ができたのだ



そしてジョットは、グロリアに対価として城を用意した。城の最上部に全てを見渡せる部屋と、地下のある、薔薇園に囲まれた城だった



−−それはいつしか、城という名の“檻”となるのだ




†Before††Next†

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