[携帯モード] [URL送信]

孤独な月を 神は笑った
TREDICI



「いい加減にしろよ、てめぇ…!!T世[プリーモ]との約束だか何だか知らねぇが、関係無い俺達を巻き込むんじゃねぇ!!」


「……関係無い?本気で言っているのか、獄寺隼人。ジョットが創設した巨大組織を現代で背負うおまえ達が、魔女との間に交わされた契約に関係無いと?

よくもそんな生意気な事が言えたものだな、思い上がりも大概にしろ」


「思い上がってんのはてめぇだ。魔女だか何だか知らねぇが、どうせ俺らとは違う次元で生きてんだろ。だったら“人間”のいざこざに介入して来んじゃねぇよ」



ツナの首に爆発物を取り付けられた事で獄寺の怒りは頂点に達し、グロリアに勢い良く食って掛かる



グロリアの目的が分からない。味方なのか敵なのかすらはっきりしないこの状況で、気遣いや優しさなど温い事は言ってられないのだ



「…獄寺隼人。おまえの弱点はその気高い忠誠心と真っ直ぐな信念にある。ボンゴレの為、沢田綱吉の為にと奮闘するのは良い事だが、それでは見える物も見えなくなるぞ。

護りたくないモノを守るのも強さの1つ。おまえは山本武からわたしを守る事と同時に沢田綱吉を守る事になるのだよ。

その意味が解せん程おまえは馬鹿じゃないだろう。怒りは人を強くするが、同時に盲目的になる。おまえも自覚しているはずだぞ、獄寺隼人。


そして山本武、おまえは優しすぎるその心の広さが弱点だ。時として友に仲間にその刄を向けなければならない事もある、おまえの優しさは命取りになるぞ。

仲間思いなのは結構だが、優しさだけで救える物など何も無い。それが判らぬおまえは何も救えないよ。


…良いか、わたしはおまえ達が憎くてこんな事を課しているわけではない。できる事ならわたしもおまえ達なんぞに関わりたくなかった。

−…しかし1度交えた縁[エニシ]は決して消え去る事は無い。ならば最期まで付き合ってもらおう、互いの為に、全てはボンゴレの為だ」



高らかに告げたグロリアに言い返す事ができず、獄寺は悔しそうに閉口した。グロリアの言っている事は正しい。正し過ぎて違和感を感じる程に正しいのだ



「…てめぇ、全部終わったら1発殴らせろよ」


「おまえ如きがわたしに触れられるものならな。しかしおまえはどうやら口の利き方というものを知らんらしい。わたしの機嫌を損ねた罰だよ、時間制限を設けようか」


「なっ…!!」



グロリアがパチンと右手を鳴らすと、ツナと山本の首に下がるチョーカーの宝石に数字が浮かび上がる


1秒ごとに減っていく数字は“300”からスタートした。赤い数字が無気味に浮かんでいる



「リミットは5分だ。山本武はわたしから鍵を奪えれば良し、獄寺隼人は山本武からわたしを守り抜けば良し。もしくは相手を戦闘不能に陥らせても可としよう。

獄寺隼人はわたしという庇護対象が付く分ハンデをあげようか。掠り傷や切り傷程度なら目を瞑ってやる。ただし、わたしが多量の出血を伴う傷を負った場合おまえの敗けだ」


「待てよ、俺の武器はダイナマイトなんだぜ?首に爆弾仕込んだ山本に攻撃なんて…」


「わたしに抜かりは無いよ、獄寺隼人。その爆弾はわたしの意思でのみ爆発する。おまえがどんなにダイナマイトを使おうと誘発する心配は無い」



グロリアの言葉にほっと息を吐いた獄寺に対し、山本は何か引っ掛かるものを感じたのか形の良い眉を潜めた



「…なあ、オレが獄寺を攻撃して、獄寺があんたを守って、オレは鍵を取れなければ敗けで獄寺はあんたを守り切れなければ敗けって事は、


…結局、どっちかが敗けるって事じゃねーのか?」



山本の指摘に、グロリアはにんまりと笑った。嘲るような色をたたえて、しかしどこか感心したように



「そういう事だ。ちなみに鍵無くして無理に外そうとすれば爆発させるから馬鹿な真似は止めるんだな。

…言っただろう?“全てが終わった時必ず1人は死んでいる”と。犠牲無くして得られる物など何も無い。まずはその1人目だ」


「何、言ってやがる…!!そんなのッ、」


「ボサッとしていて良いのか?何もしなければ2人とも死ぬだけだそ。…5分後に立っているのは山本武か沢田綱吉か……。

始めろ、突っ立ってるだけでも時間は過ぎて行くぞ?」



ツナと山本のチョーカーは既に250をカウントしている。どうするべきか悩んだ挙げ句、山本は時雨金時を抜いた



「おい…!!」


「やるしかねーだろ、どっちかが勝たない限り、オレもツナも死ぬんだぜ?」



山本が本気で刀を抜いた事を悟り、獄寺も意を決してグロリアの前に立つ。お互いから滲み出る殺気は本物、しかし微かな戸惑いが混じっているのも事実だった



「…なあ、いっこ教えてくんねーかな」


「何だ、言ってみろ」


「鍵、何処に隠した?場所が分かんねーとやりにくいだろ?」



山本の主張に納得したのか、グロリアは胸元に隠していた解除装置を差し出した。その上狙い易いように配慮したのか、チェーンに通して首から下げる



「俺の前に出るなよ、じゃなきゃダイナマイトが当たっても俺は責任取らねぇぞ」


「馬鹿が、それも含めておまえの仕事だろう」



チッと舌打ちした獄寺が煙草で引火したダイナマイトを山本に向けて放る。その導火線を事も無さげに全部切った山本は一気に間合いを詰め、獄寺の首目掛けて時雨金時を薙ぐ



グロリアを庇いながら山本と戦う事は予想以上に難しく、獄寺は苛立った。しかもグロリアは自力で山本の攻撃から逃げようとするつもりは無いらしい


山本に間合いに入られる度にグロリアの腕を引いて遠ざけなければならないのは非常にやりづらい。しかしカウントダウンは既に200を切っている。残された時間もわずかだ



山本の鋭い攻撃をギリギリの所で避けながら、獄寺は必死に頭を回転させた。何か、グロリアを出し抜ける方法があるはずだ


山本はそこまで考える余裕は無いだろう。何とかして自分が策を思い付かなければ、死ぬのは多分山本なのだ


ツナはドン・ボンゴレ、こんな事で失うわけにはいかないと、山本も分かっているはず。勿論山本がそんな風に遠慮する事をツナは望んでいないだろうが、山本ならツナの為に死ぬだろうと思った



カウントはとうとう二桁に突入する。あと100秒足らずで、大切な仲間を1人失うのか


ギリッと噛み締めた唇が切れたのか、獄寺の口の中に鉄臭い味が広がった




†Before††Next†

13/20ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!