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孤独な月を 神は笑った
DIECI



※再び痛いです。むしろこっちが本命。苦手な方は逃げて下さい。



















グロリアは骸の能力で言う所の地獄道と修羅道を同時に使っているのだ。幻術を操りながらもずば抜けた戦闘能力を発揮している


ならば、と骸は強く目を瞑った。極限まで意識を集中させ、次に大きく目を見開いた時には瞳の数字は五になっていた



骸が纏う闘気が一気にどす黒い物へと変わる。人間道を発動した骸は、最も醜く危険な能力を最大限に利用しグロリアへ更なる怒涛の攻撃を仕掛ける



−−火傷で右手が使い物にならないのか、グロリアは鎌を左手のみで操っていた。先程よりも格段にレベルの上がった骸の攻撃に対応しきれなくなったらしく、グロリアが押され気味になる


グロリアが鑪[タタラ]を踏んだその隙をついて、骸は地獄道も発動する。人間道と地獄道を同時に発動するなんて、今でにやった事は無い。それ以前にできるとも思っていなかった


そんな事をするのはあまりにも危険すぎると、無意識的に拒絶していたのだ。しかしグロリアに対する怒りや憎しみや、そしてわずかな哀しみでまともな判断ができなくなった骸は、幻術で作った蓮の蔦でグロリアの両足を拘束する



骸が人間道と地獄道を発動した瞬間グロリアがわずかに微笑んでいた事にも気付かず、とどめと言わんばかりに三叉槍を繰り出した





「…Addio」





“永遠にさようなら”、そう言って骸はグロリアの心臓を狙った。しかし両手は自由なうえ、何よりグロリアには先を読む能力がある


どんなに骸が必死になったとしても、どうせ鎌で防がれるだけだと、だからこそ骸は渾身の一撃を人間の最も急所である心臓を捉えて撃ったのだ





−−グサッと鈍く重い音を立てて、骸の握る三叉槍は見事なまでにグロリアの左胸を貫いた



深々と刺さった槍からは確かに肉を貫く感覚が骸に伝わり、傷口からは一瞬で血が溢れ出す


確実に防げたはずの最悪な一撃をその身で受けたグロリアは、骸が狼狽えて手を離した三叉槍を自力で引き抜いた


途端に溢れ出す鮮血。グロリアの白いドレスを一瞬で真っ赤に染め上げる



「グロリア、何故…。止められたでしょう…?」


「……気は済んだか、これで。どうせわたしはこの程度では死ねぬ、おまえの気が晴れればそれで良い」



ふらり、と倒れ掛けたグロリアはなんとか踏みとどまり、骸の足元に三叉槍を投げて寄越す。槍の先端にはまだ温かいグロリアの血がべっとりと着いていた



「…人間道と地獄道が同時に使えれば、おまえは十分だろう。なんならまだ闘るか?」


「それよりもグロリア、止血を…!!」


「自分で刺しておきながら何を言う。おまえもまだまだ甘いな」



呼吸も荒く最早立つこともままならない様子のグロリアを、どこからともなく現れたシャドウが支えた


そのまま無表情でグロリアを抱き抱えると、すぐさま骸に背を向ける



「…六道様、その槍で成立する“契約”は主には通じません。間違っても憑依しようなどと思わないようになさいませ。

もし主の身体を乗っ取ろうとすれば、貴方の魂が消滅します」


「シャドウ、そんな事より早く手当てを…」


「…馬鹿が、わたしを殺すつもりだったんだろう?」


「それ、は…グロリアが、僕を、挑発したからです」


「ふん……、わたしの殺し方を思い出したらまた殺しに来い。おまえになら殺されてやっても良い」


「何を、言って…」


「おまえにはその資格がある。…待っているぞ」



自嘲的に笑ったグロリアは、そのままシャドウに抱えられて演習場を後にした


シャドウが歩いた後には、点々と大きな赤い泉ができていた




†Before††Next†

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