孤独な月を 神は笑った
NOVE
※先に言っておきますが物凄く痛いです。流血表現もあります。飛ばして読むとストーリーが分からなくなりますが、そういった物が苦手な人はブラウザバックを。苦情は一切受け付けません。
『転生したおまえが前世の記憶を失っていた事が酷く不愉快でね、何か罰を与えてやりたくなったのだよ。来世でも覚えていると交わした約束も忘れ、別人としてのうのうと生きていく事が赦せなかった。
おまえの両親をエストラーネオファミリーにし、子供−−つまりおまえを実験台に差し出すように仕向けたのはこのわたしだ。
辛かったんだろう?エストラーネオでの実験は。地獄を生きて味合わせた張本人が目の前に居るのだ。復讐しない理由がどこにある。前世という過去をおまえが引き摺る必要は無い、おまえはおまえの意思で生きれば良いのだよ』
昨夜、呆然とする骸に嘲笑うかのようにグロリアはそう告げた
事実を告げるだけ告げて、混乱して何も言えない骸を残してグロリアは部屋へと引き上げてしまった
その後1人部屋に戻った骸も、ぐるぐるとグロリアの言葉が頭の中で繰り返され食べた物が逆流しそうだった
この忌まわしき赤い右目を与えたのがグロリアだなんて、この世の物とは思えぬ悪魔の所業であるあの人体実験に自分を送り込んだのがグロリアだっただなんて、骸は夢にも思わなかった
そもそも前世の記憶が無い事を理由にそんな目に合わされただなんて、逆恨みも良い所だ。普通は前世の事なんて忘れていて当たり前なのだから
未だに時折痛む右目。その度に思い出すあの頃の記憶は、十年以上経った今でも骸を苦しめている
地獄のような目に合わせた諸悪の根源は、グロリアだったのだ。世界中から忌み嫌われるこの右目を与え、マフィアなどという穢れた存在に陥[オトシイ]れたそもそもの悪根
殺せる程近くに居るその存在が、何よりも憎くて堪らなかった
「…ほう、逃げずに来たか」
朝食を無視して演習場に来た骸は、既に待っていたグロリアを真正面から睨み付けた
昨日のグロリアの発言の真意が気になるのか、ツナ達も観覧席に居る
「逃げる理由が分かりませんね。僕は貴女に“お礼”をしに来たんですよ」
「良い心構えだ。怒りと憎しみは人に力を与える。しかし理性が失われては意味が無いぞ、自我は決して見失ってはならん」
「…そんな助言は不要です。僕は貴女を殺します」
「……殺れるものなら殺ってみろ。どうせわたしの殺し方も忘れたのだろう?」
三叉槍を構えた骸は瞳に怒りと憎しみを顕[アラワ]にしている。その瞳を楽しそうに見て、グロリアもどこからともなく長い鎌を取り出した
それは死神の持つ鎌のような、大きな刃の付いた命を狩る形をしていた
「ルールは簡単だ。昨日の沢田綱吉同様、幻術・戦闘能力でわたしを越えてみろ」
「…それは、殺しても良いという意味ですね?」
「勿論だ、…できるものならな」
グロリアがそう言った瞬間、骸の右目が六から一に変わり、演習場の床が一面真っ赤な炎に包まれた
その熱気は地獄の業火の如く燃え上がり観覧席に居るツナ達にも届く程で、その灼熱の炎はグロリアの長いドレスの裾と銀髪を焦がしていた
ほう、とどこか感心したように呟いたグロリアが鎌を高く翳すと、何も無い天井から雨のように矢が降り注ぐ
その矢を三叉槍を図上で高速回転させる事でやり過ごし、骸は素早くグロリアを見た。すると案の定、グロリアの周りにだけ矢が降っていない
すぐさま駆け出し一瞬でグロリアの間合いに入り、三叉槍を構える。しかし急所を狙って繰り出した槍はあっさりと鎌で弾かれ、再び距離を取られてしまう
「…単純な動きではわたしを殺せんぞ、六道骸。おまえは状況判断と人心掌握術に長けている。それを最大限に活用しろ」
本気の殺し合いをしているというのに、相手に助言をするというグロリアの余裕。それが気に食わない骸は数字を四に変え修羅道で一気に畳み掛ける
人間離れした戦闘を見慣れているはずのツナ達ですら肉視できない程素早い攻防
にも関わらず、グロリアは余裕の表情で骸の三叉槍を鎌で防ぎつつ足元から蕀[イバラ]の蔦を生やし始めた
「くっ…」
それに足を絡み取られ、骸は一瞬グロリアへの攻撃を止め足を捉える蕀を引き裂いた
しかしその隙をグロリアが見逃してくれるはずもなく、大きく振り被った鎌が骸へと振り降ろされる。骸はそれを後ろへ2・3度飛び退いて交わした
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