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孤独な月を 神は笑った
UNO



ババババババと乱射銃が火を吹き、一瞬で幾つもの命が奪われる。戦乱と業火の中で立っている人間の方が少なく、地面に倒れている人間は皆一様に鮮血に染まっていた



イタリア某所、とあるファミリーのアジトにて起きた抗争はボンゴレの圧勝で終わるかと思われていた


ツナ・雲雀・獄寺の幹部とその部下で乗り込んだ敵ファミリーのアジト。先に喧嘩を売られ仕方無く買ったのだが、予想外に相手の足掻きが続いている



最初は固まって戦っていたのだが3人は散れ散れになってしまい、今は連絡も取れない。安否も定かではなく我が身を守るだけで精一杯だった



グロリアに教えて貰ったあの調査書では、確かに弱小ファミリー規模の大きさのはずだった


ファミリーの構成員も格納庫に保管されている数も恐るるに足らない程度のものだと認識していた



しかし勝利を確信して乗り込んだこの敵戦地だったが、その戦局はどちらに傾くかも分からない状況に陥ってしまっている



『はぁっ、…くそっ…!!』



ナメていなかった、と言えば嘘になる。勝てると思っていた。雲雀も、獄寺も、自分も居るのだ。敗けるはずがないと思った



しかしその甘い考えの結果がこれだ。ファミリーの仲間に多数の死者を出し、大切な守護者まで危険に晒してしまっている



血と火薬と硝煙の臭いに鼻は既に使い物にならなくなっていた。気配と己の直感のみを信じて物陰に隠れた敵を倒し、万一の時にと決めていた集合場所に向かう


攻撃してくる敵も減ったが、それ以上に合流する部下が居ない事にツナの不安は増すばかりだ


あの守護者二人が異常に強い事は分かっている。信じているのに、不安になる。無事な姿をこの目で確認するまでは、決して油断はできないのだ



「……!?、雲雀さん…!!」



前方に、黒いスーツを赤で更に黒く染めた雲雀を発見した。血を流し過ぎたのか物陰に身を潜めもせずにふらふらと歩いている



「…綱吉か、生きてたの」


「雲雀さんも、無事で良かった…。隼人は、見ませんでしたか?」


「さあ。なんか色んな所で爆発も起きてたし、火薬の臭いが充満し過ぎてて分からないよ」


「やっぱり…」



約束の場所、アジトの裏にある池へとやって来た。しかしやはりそこに獄寺の姿は無く、ツナは心配そうに辺りを見渡した



「綱吉、これ以上ここに居るのは危険だ。とにかく君だけでも離脱しないと」


「でも、隼人が…」



その瞬間ドガアァァンと轟音と共に大地が揺れ動き、ツナと雲雀が背にしていた敵のアジトが一瞬で吹き飛んだ


直感で何かヤバいと気付き一拍早く飛び退いていたものの、爆風と粉々になった瓦礫を全身に浴びてしまい頭を抱えて踞った



アジトを破壊するのは獄寺の役目だった。しかしそれは3人の無事が確認できてから行われるはずで、雲雀とツナは良いものの獄寺の安否は未だに確認できていない


まさか、何が何でも爆破しなければならないような状況に陥ってしまったのだろうか。爆風が収まっても現れない獄寺に、不安は募るばかりだ







「十代目ー!!」


「隼人…!!」



垣根に隠れていたツナの耳に届いた明るい声。あの爆発の中生き残り、無事この集合場所に来られたのだ



「良かった、無事で…」


「遅れてすんません。中は全員やりました」


「うん、とにかく本部に、」


「死ね、ボンゴレ…!!」



3人がやっと揃い、油断していた。瓦礫の中に潜んでいた生き残りが手にした散弾銃がツナ達目掛けて吠える


反応が遅れたツナ達は、防御体勢も取れず向かって来る弾を見つめていた



『ヤバい、やられる−−!!』



自分の不覚のせいだ、とツナは半ば諦めてしまった。自分は死んでも良い、しかし大切な仲間である獄寺と雲雀を死なせるわけにはいかない


両手を広げて二人を庇おうとしたツナは覚悟を決めてぎゅっと目を瞑った



















「…やはりこの程度か、情けない」



ふわり、とツナ達の前に舞い降りた黒い影。いつものように露出度の高いドレスを身に纏い、しかしあの白いバンダナを目に巻いていない


空中からいきなり現れたグロリアはツナの前に立ち、飛んで来る弾丸に左手を翳した



「グロリア、危な、い…」



グロリアに直撃すると思われた鉛弾は全て空中で停止した。まるで目に見えない何かに阻まれたように、宙に浮いている



「無様だな、沢田綱吉。わたしが来なければ、おまえらは死んでいたぞ?」


「……。」



蔑むような目で見られ、ツナは何も言い返せず閉口する。確かにグロリアの言う通りだった。グロリアに助けられなければ、今は止まっているあの弾に体を貫かれツナは死んでいたのだ



「敵は皆殺しにしたが自分達の部下も全滅、か。まったく、酷いな」



惨劇という言葉が似合いそうな辺りを見渡し、グロリアは溜息を吐く。実際、ボンゴレ側で今生き残っているのはツナ達3人だけだった


    ・・
「お前、何だ…!?」



ツナ達に向けて先程引き金を引いた男が、グロリアの人間離れした諸行を目の当たりにしてそう呻いた


なんだまだ生きていたのか、とうろんげに視線を流したグロリアは、口元を歪ませて笑っていた






「わたしは“魔女”だよ、死に逝く者よ」



目を見開いて驚いた男に向けてグロリアが左手を払う。すると、空中に止まったままだった弾が男目掛けて飛び、文字通り男を蜂の巣にした


断末魔の叫び声を上げる事無く即死した男を一瞥し、グロリアはツナ達に向き直る



「…ここは空気が悪い。城へ戻ろうか」



ドンッとグロリアがツナの肩を押すと、バランスを失ったツナが獄寺に倒れ掛かり、更にツナを支えきれなかった獄寺は雲雀を押し倒す


まるで将棋倒しのように倒れた3人は、揃って池へと落ちて行った




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あきゅろす。
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