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孤独な月を 神は笑った
UNO



六道輪廻とは、即ち六道の間を生まれ変わり死に変わりして迷いながらも生き続ける事である


1度死しては六道を1つ廻り、再びこの世に生を受ける。その繰り返しだ



六道とは、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の迷界。生きとし生けるもの全てが、生前の善悪の業によって死した後住む世界



しかし輪廻とは、霊魂が人間・動物・植物など、1つ若しくはそれ以上の存在に生まれ変わっていく事なのだ



人間として死んだ魂が六道を廻った後植物として転生する事も、動物として生を全うした魂が動物と植物に二分して再びこの世に産まれ落ちる事もある



地獄・餓鬼・畜生は三悪趣と言われ、生前悪行に手を染めた魂が苦しむという


餓鬼に住する者は内障・外障により飲食することができず常に飢餓に苦しみ、畜生道では禽獣[キンジュウ]−つまり鳥と獣−の姿になり苦しむ


その苦しみに耐え、その行いを悔い改めた魂のみが再び転生できるのだ。人間、あるいは動植物に



そしてこの世で生きる生物全てが、あの世である六道の記憶を持たずに生きている。故に再度罪を犯したり倫理に反した行いに走る者が居る





−−しかし、世界中に1人だけ、六道輪廻全ての記憶を持つ人間が居た


その名を六道骸。あの世とこの世の総ての記憶を持ち、冥界の能力を操る男



そして、もう1人






















1日以上コンピュータと睨み合っていた骸は、掛けていた眼鏡を外し目頭を押さえた


デスクワークが増えている気がする今日この頃。つり目黒髪の同僚よりは戦闘意欲は無いが、しかしこうして座りっぱなしよりは多少なりとも体を動かせる方が良い


んー、と伸びをし傍らで同じ様にコンピュータを構っている千種に声を掛ける



「少し出て来ます。何かあったら呼んで下さい」



ポケットの中に携帯電話が入っている事を服の上から確認し、静かに部屋を出た


急ぎの仕事でなくとも後回しにはできない性格のせいで、千種と共にずっと部屋に籠りっ放しで節々が軋んでいる気がする


少し身体を動かそう、と骸はそのまま鍛練場へと足を向けた


近頃は実力を出して任務をする事もほとんど無い。己の力を信じていないわけではないが、時折発揮しなければ自ずと鈍ってしまうだろう


部外者立ち入り禁止にでもして、久々に能力[スキル]を出し尽くそうかと考えた



−−ヴン、と赤い右目の数字が“六”から“三”へと変わる



「第三の道、−−地獄道」



毒蛇、黒豹、タランチュラ。次々に死をもたらす生き物を召喚していた骸は、以前と変わらぬ己の能力にほっと安堵する



肉体的な戦闘能力に関しては、近い内に雲雀にでも頼んで手合わせしてもらおう


本気の殺し合いとなれば、何故か、何故か自分を毛嫌いしているあの戦闘狂も喜んで力を奮ってくれるだろう



ヴン…と右目の数字が再び“六”へと戻る。簡単なウォーミングアップ程度にしか能力を出していないが、今の骸にはこれで十分だった


強大になったボンゴレの力。それに伴い名実共に骸の身体的な能力も格段に上がっていた


必要以上の力を持つことも、そしてその力を使う事も無いのだ



そろそろ執務室に戻らねば千種が自分を探しに来るだろう、と骸が出口へと振り向くと





「久し振りだな、六道骸」



優雅に壁にもたれ片手を上げ骸に笑い掛けるグロリアが居た



「…え?」



あれだけ城から出ないと豪語していた、頑なに骸達とボンゴレに訪れる事を拒んでいたグロリアが何故ここに


グロリアは確かにそこに存在していて、自分が作った幻像ではないはずなのに。骸はそれが信じられなくて、何度か瞬きをしてしばし固まった



そんな骸の様子を笑って見ていたグロリアは、さもそうなる事が分かっていたかの様に口角を吊り上げた



「随分と間抜け面だな、六道骸。色男が台無しだぞ?」



にやり、そう言って意地悪そうに笑うグロリアは以前となんら変わり無い

   ・・
やはりあのグロリアがとうとうこのボンゴレのものになったのだ、と骸は内心ほくそ笑んだ


           ・・
「…すみません、貴女がここに居る事が少し信じられなくて」


「だろうな、顔にそう書いてある」


「……、今日はどういったご用件で?生憎雲雀くんは任務で出てますが」


「わたしを誰だと思ってる、そんな事は百も承知だ。今日はおまえ達のボスの顔でも拝んでおこうかと思ってね。居るだろう?」


「…綱吉ですか、なるほど」


「ああ、言っておくがおまえ達の味方になったわけではないからな。わたしを欲している男の顔くらい見ておこうと思っただけだ」



ようやく厄介な任務が片付く、そう喜んでいた骸はグロリアの言葉にがっくりと項垂れた


恐らくグロリアはそれすらも計算の内だったのだろう。ニヤッと嫌な笑みを浮かべている



「で?この馬鹿デカい屋敷を案内くらいはしてくれるんだろう?」



すっと滑らかな動作でグロリアの手が骸へと差し出される。以前は真っ赤だった長めの爪は、今は真っ黒に塗られていた



「…勿論ですよ」



表面上は至って紳士的に、しかし頭の中では如何にしてこの魔女を堕とすかを考えながら、骸は鍛練場を後にする



いつの間にか、骸の周囲を埋め尽くしていた蜘蛛や蛇達は姿を消していた




†Before††Next†

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あきゅろす。
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