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ルチフェルの泪とサタンの唄声
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ふわぁっと風に舞った花弁が、髑髏の濃紺の髪を拐う


裏庭の一角。背の高い花に囲まれたそこに踞り、髑髏は静かに涙を流していた



骸に、見放されてしまった。その事実が髑髏に重くのし掛かる


自分の仕出かした事への後悔とこれから先への不安で頭を抱えた







「……ここ、綺麗よね。落ち着くからあたしも好きなの」



唐突に、背後から聞こえた声に髑髏は振り向いた


そこに居たのは予想通り黒いワンピースの使用人で、風に巻き上げられる髪を片手で押さえている



「…何しに、来たの」



今は、というかこの先永遠に顔を見たくなかったのに、と髑髏はあからさまに顔を背けた



「ちょっとお話をしに。お隣、良いかしら」



髑髏が返事をしないまま花を睨んでいるので、柘榴は苦笑いして少し離れた所に腰を降ろした


そのまま会話も無いまま時間だけが流れ、時折強い風が二人の間を通り抜ける









「…骸さんが、貴方に謝りたいって。傷付いたでしょうけど、許してあげてくれない?」


不意に柘榴が語り掛けた。視線は花に向けたままで、髑髏には背中を向けている



「“顔も見たくない”って、言われた側は辛いわよね。……あたしも、辛かったから」


「え…?」


「世界で1番大切な人に、最期に言われた言葉がそれだったの。悲しくて哀しくて、あたしは、逃げたけど。

…でも貴女と骸さんなら、きっと仲直りできるわ。ね、だからもう1度骸さんを信じてあげてくれない?」



思いも寄らない柘榴の言葉に、髑髏は軽く目を見開いた。柘榴は話す間、1度も髑髏を見ない



「…骸様、怒ってない?」


「勿論。むしろ女の子を泣かせた事を後悔してたわ」


「……貴女、は?」




ようやく、柘榴がまともに髑髏と目を合わせた


骸達には見せた事の無い、優しく慈愛に満ちた笑顔で



「どうしてあたしが貴女を怒るの?貴女もう十分に反省してるんでしょう。だったらあたしが言う事なんて何も無いわ」



柔らかく笑んだ柘榴に、髑髏も吊られて笑った



「ほら。貴女、笑った方が可愛いわ」



髑髏は無言で柘榴を抱き寄せた



「……ごめんなさい」



ぽつり、と髑髏が呟くように謝れば、柘榴は更に笑みを深めた



「いいの。…あたしは、“彼”から逃げたから。だから尚更、貴女には頑張って欲しいの。

骸さんも悪い人じゃないわ、きっと貴女の事分かってくれる」



柘榴の肩に回している力を強め、髑髏は柘榴の胸に縋って再度涙を流した


これ程綺麗な人を自分は痛め付けてしまった、その後悔の念が髑髏を襲い、しかしそれすらも甘受してくれた柘榴に更に涙を煽られる




毎日のように骸が千種と犬に愚痴る様を側で見ていた髑髏は、どうしても放っておけなくなってしまったのだ


まずは柘榴が自らボンゴレ本部を出て行くように小さな嫌がらせから始め、顔色1つ変えない事に苛立ちがつのりエスカレートしていった



雲雀が護衛に付いている時間帯をわざと狙いツナと雲雀を追い出し、骸と二人きりにしたのも髑髏の策略だった


ピアスを落として行ったのも、キャッチを残さなかったのも、全て計画の内で


わざと物音を立てて骸を部屋から追い出すまでは、髑髏の計画は完璧だった。それも、上手くいきすぎていると髑髏が不安になる程に



まさか柘榴が違和感を感じているとは疑いもしなかったのだ



柘榴の居る骸の部屋に入った瞬間から見破られていた自分の正体に、これから自分がしようとしている事への恐怖に、髑髏が内心震えていた事はきっとこの先誰も知る事は無いのだろう



それでも良い、と髑髏は思った



犯してしまった過ちは消えない。今更慰めも期待していないし、むしろ自分にそんな資格があるなんて思ってもいない



しかし、そこから更正する事はできるのだ



折角柘榴が笑ってくれているのだから、髑髏はそれに甘えようと思った















「……ありがとう。もう、大丈夫…」



嗚咽が幾分治まった頃、ゆっくりと髑髏が柘榴を放した


その頬は若干赤らんでおり、普段人前で泣く事が無かった髑髏が恥ずかしがっている事が伺える



「いいえ。…お屋敷に、戻りましょうか」



先に立ち上がった柘榴は髑髏に手を伸ばし、その手を掴むように促す


その白く傷痕の目立つ手をじっと見つめた髑髏は、しばらくしてから躊躇いがちにその手を取った





  ・・・・・・
「…はじめまして、あたしは大鳳柘榴。貴女のお名前は?」



二人の間を、優しい風が吹き抜けた




《†front†》

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あきゅろす。
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