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包装されているパンは、丸く白いメロンパン。

何故、メロンパンをチョイスするのか詳しくは追求しないが。



「お前は、何か作るのか?」

「ああ、休みの日にはいい暇潰しだからな」

「遠野にも食わせるのかよ」

「食いたいって言って来たらな。あいつなら、まだ寝てるだろうな」


あいつの原動力は、主に飯とセックスだからな……。
欲にまみれた、ろくでもない奴だが、作る量が増えるのは別に困る訳でもないし。



「たまには、理央とかにも食わせてやれよ。喜ぶから」

「そうか?たかが料理だぜ」

「お前が作るなら不味くても食うよ、あいつは。じゃあ、俺は会計済ませて帰るから」


それから、一言や二言交した後で、縞は去っていった。
片手に、メロンパンを提げて。





「何、作るかー……」


買い物をしているが、やはり気分的に暇な感じが拭いきれず、独り言を零すと、変な視線を感じて背後を振り返った。

陳列棚の向こう側に隠れるように、こちらを見ている金髪がいた。



「隠れてるつもりらしいが……、結構見えてるぞ。諏訪原」

「………っ!?」


ぴこん、と三角の形をした狐の耳が、頭から飛び出す。

すぐさま立ち上がった諏訪原は、きゃんきゃんと高い声で言った。



「み、見つけろなんて誰も言ってないでしょ!?」

「何だよ、そりゃ」

「み、みみみ見てたんだからね!遠野くんに料理作って、同室者以上のスキンシップを図るつもりなんだ!僕をさし置いて、この……っ卑怯者!」

「妄想の飛躍も大概にしろ。かくれんぼなら、外でやれ。大体、何してんだ?」

「っ、別に!たまたま見掛けた群堂くんが、たまたま卵を手に取ってカゴに入れてたから、何を作るのかと思って………、あ、違う!嘘!群堂くんを見てただけなんだから!オムらいすっとか期待してないんだからねっ!」


オムライスと言いたかったのだろうが、発音がおかしく、動揺していて落ち着きのない言葉ばかりだ。

俺を見てただけって、何なんだ。



「オムライスを作る気はねぇけど……、食いたいのか?食うか?」

「えっ…、本当!?」


目をキラキラさせて、陳列棚から身を乗り出す諏訪原。

だが、すぐに、はっと我に返って顎を引いた。



「僕が、庶民料理なんてっ」

「遠野と一緒に食べれるかもしんねぇぞ。あいつ、俺が作ったの以外食べねぇけどな」

「遠野くん……!」


もう開き直りやがった、こいつ。

こいつも暇なのか?
まあ、こいつなら、憲律会の仕事があろうがなかろうが、暇のような休みを過ごすのだろうが。理央も大変だ。

そこで、縞が言っていた言葉を思い出した。




「何なら、理央も一緒に……」

「蓮宮会長!?だめ、だめだめ!遠野くんと喧嘩になるかもだし……っ」


粗方、理央に仕事をさせられるからとか考えているんだろうが、今日は憲律会の仕事はないと言っていた。
だが確かに、遠野と鉢合わせさせて、仲良く食事なんてのは、お互い荷が重いだろう。



「しゃーねぇな。ついてこいよ。三人で食おうぜ」





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あきゅろす。
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