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青い青い空は木々に覆われて姿を隠しているというのに、太陽の光ばかりは茂った葉の隙間からも惜しみなく降り注いでくる。
蝉の求愛と獣の雄叫びと草木の並木声が重なり、森の声となって耳をつんざく。
昼間だというのに何やら不穏な空気が感じられるこの森は、普段大人でさえ寄り付かない危険な森である。
そんな森に、齢13にして親もなく立派に生き抜く少年がいた。

「あっついねェ〜…」

立派に生き抜いてはいるが、身体の生理機能までもは誤魔化せない。

「飲んだ水と流れた汗、どっちが多いかなんて考えるまでもないねェ〜」

その立派な少年の一人、ボルサリーノは、帽子を外し流れる様に落ちる汗を手で拭った。汗を吸い込んで重くなった帽子をきつく絞り、もう一度深く被る。不快だが、ないよりかはましだ。

「中々獲物も見つかんないし、今日はもうわっし帰っちまおうかねェ〜」

つい漏れた弱音に返事はない。ため息をついてしゃがみこんでしまった少年は、しばらく休憩と決め込んだのか背中に背負っていた本を開きだした。

ガサッ

無防備に読書にふける少年の背後から不穏な物音が聞こえた。
獰猛な猛獣の多いこの森には、最早小動物などの獲物はいないに等しい。より狂暴な獣しか生き残れない。数秒の隙が命取りになるこの森に容赦はない。

ガサッ…ガサガサッ
グルルルル…

草木をかきわける音が近づいてくる。猛獣の呻き声がすぐ真後ろまでやってきているが、少年は聞こえていないのか本から目を離さない。

ガサッ
「ガオオオー!!」

と、次の瞬間、2メートルはあろうかと思われる巨大な虎が牙を剥いて襲ってきた。
ようやく本から目を離し、ゆっくりと後ろを振り向く。もうその鋭い爪がボルサリーノの喉元をかっ切ろうかという時。

「おやァ〜?獲物発見したよォ〜」

呑気なことを溢しているボルサリーノは、目の色も変えずに本を閉じた。
瞬間、巨大な虎の巨体が吹っ飛ばされた。
何が起きたのか、吹っ飛ばされた虎でさえ理解出来ていないだろう。吹っ飛ばした張本人はいたって平然と自分の何倍もある虎を引きずりながら来た道を戻っていった。





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