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※※※※
────、──、──!」
頭の遠くで誰かの笑い声が聞こえる。
はっきりとした言葉は聞き取れず、その声が現実のものなのかどうかも判断がつかない。
そう言えば、こんなにゆっくりと寝たのはいつぶりだろう。
身体が、脳が、睡眠を欲しがっているのを感じた。
が、声は否応なしに頭に響き、それは無理に覚醒へと追い立てた。
「ん、」
重い瞼を持ち上げると、ぼやけた視界で知らない木目の天井が目に入った。
それと同時に、ゆらゆらと地面が上下に動くのを感じる。
(ここは、船…?)
懐かしい波の揺りかごに何処かほっとする。
そして何より、己は海を嫌いになった訳ではなかったのだと安堵した。
とりあえず起きようと身体を起こせば、何故だか妙に腹が痛んだ。
一体何なんだと首を傾げ、腰を上げる。
スプリングの効いた柔らかいマットに思わず足がふらつく。
足場の悪いそれは、普通のベッドの何倍もある。
ベッドの横には見たこともない機具が置いてあり、ますます場所の心当たりがなくなった。
くるりと部屋を見渡すと、そこは誰かの寝室だろう憶測が付いた。
ベッドと比較すると小さいそれは、ルフィからすると十分の広さがある。
部屋の探索もそこそこに、広さもあれば高さもあるベッドから降り、部屋の角の扉に手をかける。
「「「かんぱーい!!」」」
「おい酒足んねぇぞぉ!」
「ギャハハハハ!」
「テメェそりゃおれの肉だ!」
「一年ぶりの出航だー!!」
少し開いただけで、耳をつんざくような騒音が部屋に溢れる。
(ああ、ここは海賊船だ)
一旦止めた手を再度動かし、扉を開ける。
部屋のすぐそこで宴があるのだろうと予想していたが、扉を開けても甲板とその先にある海がひろがるだけだった。
それでも更に大きく聞こえる騒音に、自分達の宴もこんなにうるさいものだったかと過去を振り返る。
騒ぎの真ん中にいた自分は、きっとこれ以上にうるさかったに違いない。
遠くから聞いたことなどなくとも、それだけは分かった。
「よォ、ハナッタレ」
不意に近くから声がかかった。
驚かなかったかと言うと嘘になるが、それでも起きた時から独特の気配を薄々と感じていはいた。
己をハナッタレだの呼ぶこの声は、夢にまで出てきた〔海賊王〕のものだ。
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