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暫く他愛もないことを話し、立ち話もなんだろうと奥の座敷に移動する。
その一つしかない奥の座敷はニューゲートのサイズに合わせた作りで、今まで客に使われたことは1度としてなかった。


「うっひょー!ここもでっけぇなぁ!うちのキッチンよりでけぇぞ?」

「ここはオヤジの休憩室みてぇなもんだからな」


エースの弟、ルフィはここにあるもの全てが興味の対象らしく、キラキラとした目でそれらを見つめる。
エースはそんな弟が可愛くてしょうがないようで、ルフィの質問全てに終始笑顔で答えていた。

ころころと興味を移すも、最終的にはその場所の全てであるニューゲートへと収まった。


「白ひげのおっさん!その傷は誰にやられたんだ?」

「ル、ルフィ!」

「グラララ!これかァ?」


誰も聞いて来なかったようなことまで何のためらいもなく聞いてくる。
その度にエースは顔を青ざめたが、ニューゲートは至って上機嫌だった。

昔の武勇伝を話す度に、キラキラとした目が輝く。
その視線が輝けば輝く程に、過去にしまわれた記憶がよみがえってくる。
話すうちに、まるでその当時に戻ったかのように心臓の鼓動が速まるのが分かった。
もう酒もないのに、身体が熱くて仕方ない。

思い出話に熱くなるなんて、己もまだまだ若いもんだと苦笑する。


「なぁなぁ白ひげのおっさん!そのひげはどうなってんだ?」

「ああオヤジ、実はおれも気になってたんだよ。セットしてんのか?」


ルフィといくらか話す過程で、どうやらニューゲートは機嫌が良いらしいと判断したのかエースも一緒になって聞いてくるようになった。
グラララ、と盛大に笑う。


「こりゃァブーメランだ!投げると戻ってくんだ」

「「マジか?!」」

「グララ!中にはバナナが入ってる!」

「「えええー!?」」


分かりやすい嘘にもあっさりと騙される2人。
こんなに騙されやすくて大丈夫なのかと思う反面、ずっとこのままでいてほしいと思う。
何かあれば己が守ってやればいいこと と不安をしまい込む。


「、おいルフィ?」

「白ひげのおっさん、ちっとだけ触らしてくんね?」

「グララ、髭をかァ?」


わくわくと近づいてくるルフィに、減るもんじゃなし、と背を屈める。
それでもルフィにはまだまだ高かったらしく、背伸びをして右手を伸ばす。

バランスをとるためにか、己の右腕にルフィの左手が添えられる。

熱くて仕方がないと感じていた己の身体よりもルフィの手は熱く、その熱を感じた瞬間、心臓の鼓動が一気に速まった。

思い出話に熱くなっているだけだと無視出来ない程に高鳴る鼓動。
それの意味を知らないなんて言う程、ニューゲートは若くはなかった。



「グラララ…」

(まいったな…)



“恋”なんて、一体何十年ぶりだ?




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