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「さぁーみぃなエース!」
「ああ、まぁ中で暖まれルフィ。今日は好きなもん好きなだけ食っていいかんな」
聞き慣れたエースの声と、もう一つ子どもらしい高い声が店内に入ってきた。
あれがエースの弟か?
忙しく働いていた息子達もその作業一旦止め、入り口に目をやる。
「本当か?!」
「おう!おれの奢りだ」
そこには、でれでれに緩み切った末っ子と、麦わら帽子をかぶったわんぱくそうな子どもがいた。
真っ直ぐの黒髪に大きな目、左目の下には傷がある。
寒い寒いと言う割には薄着で、見ている方が寒くなってくる。
とはいえ、万年半袖のエースよりかは幾分かましではあるのだが。
どことなくエースに似ているような雰囲気のその子どもは、キョロキョロと店内を見渡したかと思うとすぐニューゲートの所へやってきた。
「おっさんでっけぇなぁ!」
「ッルフィ!!」
いくら可愛い弟でも、オヤジに対してその物言いはマズいだろうとエースが焦る。
作業を再開していた息子達や客までも、その動作を止めてルフィとニューゲートを見ていた。
一方ニューゲートは、久々の感覚に内心少し驚いていた。
息子達以外、通行人はおろか客までも己を敬遠していたと言うのに、この子どもは何故こんなにも真っ直ぐに己の元へやってくるのか。
勿論、その敬遠が否定的なものではないことくらいニューゲートにも分かっていた。
が、やはり少し寂しかったのかもしれない。
ニコニコと無邪気に笑う子どもに己の何かが満たされていくのを感じ、グララと笑う。
店中の視線をその巨体に浴びながら、ゆっくりとその腕を伸ばす。
「おめェがちっせぇんだろうがハナッタレ」
そう言い、麦わら帽子をかぶった頭に軽く手を置いた。
軽くしたはずだったが、この小さく細い身体には十分な衝撃だったのか、少しよろける。
「っとと、そうか?なーエース、おれってちっせぇのか?」
「え、……ああ!いやまぁ、オヤジに比べりゃ誰だってちっせぇさ」
ニューゲートの方に気をとられ一瞬呆けていたエースだが、すぐにルフィに笑いかけた。
「うーん…なぁおっさん、どうしたらそんなにでかくなれるんだ?」
「グララララ!飯をたらふく食やァ勝手にでかくなるもんだ!」
「そうか!よし、いっぱい食うぞ!」
「ちょ、やめてくれよオヤジ!これ以上食われたらうちの家計がやべェ!」
思いの外和気あいあいと話し始めた3人に、次第に視線は外されていった。
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