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「生4つ!5番席!」
「おい焼き鳥はまだか?!」
「っぶねぇな!気を付けろ!」
「ああん?!やるかテメェ!」
「唐揚げと味噌煮8番席!」
「2番席会計だ!」
「焼き鳥お待ち!」
「グララララ」
熱気と喧騒に満ちたこの空間が、堪らなく好きだ。
何十年もかけ漸くここまで築き上げられたのは、息子達の苦労の積み重ねが大きく関係しているだろう。
世界中に店舗を拡大し、世に名を轟かせた居酒屋『白ひげ』。
その店長であるエドワード・ニューゲートは、人の倍はあるであろうその巨体に見合う、これまた通常の倍もの大きさの椅子に腰掛け、酒を煽っていた。
それに息子達は何を言うでもなく、また客もいつも通りだと、気にするでもない。
ただしニューゲートから漂う威圧感からか、ニューゲートの周りには客の姿はなかった。
ニューゲートは全てを息子達に任せたかのように席を立たず、時折息子達に声を掛けるのみだ。
「グララララ!客がお待ちだぞ野郎共ォ!」
へい!と合わせたかのように声が重なり、ニューゲートの声に応えるかの如く威勢を上げた。
全くいい気分だと、もう一本酒を開けようと手を伸ばす。
「オヤジ、飲み過ぎだよい」
取ろうとしていた酒を取り上げられ、お咎めの言葉をくらう。
困ったかのように眉をひそめるのは、『白ひげ』設立当初からいる古株のマルコだ。
どいつもこいつも医者みてェなこと抜かしやがって、と文句を言いつつも、しょうがなしに酒を諦める。
息子達が己の身体を心配してくれているのは、ニューゲート本人が一番よくわかっていた。
「今日は何か変わったこたァなかったか?」
「ああ、いつも通りだよい。……あ、そういや…」
「何だ?」
酒の代わりに差し出されたつまみをつつきながら続きを促す。
「いや…確か今日は、エースが弟を連れてくるって言ってたよい」
「ああ、そんな事も言ってたか…」
エースは一年ほど前に入ってきた息子で、初めは反発ばかりしていたが今ではすっかり『白ひげ』の一員だ。
そのエースが『白ひげ』で働き初めた理由が「大飯食らいの弟がいる」と言うもので、大食いのエースにそんな事を言わせる弟とはどんなものかと理由を聞いた当初は皆で弟を連れて来いとはやしたてたものだ。
その際には、弟に情けない所は見せられない、連れて来るのはもう少し自分が使えるようになってからだと断られたのを覚えている。
それから何度誘っても同じ答えしか返ってこなかったのに、漸く弟を連れて来ると言い出した頃にはやっと自信がついたかと皆で安心したものだ。
「で、エースはいつ来るんだ?」
「そろそろだと思うよい」
つまみはあっという間になくなり、マルコがそれを下げようと片付ける。
と、ガラガラ、という音にかぶさる様にいらっしゃいませ!と息子達の声が飛びかった。
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