まさに女王様
1
「「響様、お帰りなさいませ」」
「おぅ」
で、なんでこうなってんだ?
朝俺は確かにここを出て行くつもりだった。バレたからには仕方がない。いくらあいつが首にしないとか言っても、いつでも首にできるんだ。それに、昨日のことがある。
母さんには悪いけど俺、このままじゃめちゃくちゃ危ないんだ。
そう思い朝に城門が開いたのを見計らって男のままじゃすぐ捕まるから女装したまま、寮を出て門に向かった。そしたら唯一の男である警備員らしきめちゃくちゃ体格の良い奴が、出てきて止められた。
なんでだ、て聞いたら…
「響様から誰一人城から出すなと言われている」
だ、そうだ。
ふざけんなよあの野郎。やめれない、てのはこの事か。
そして懐から拳銃を取り出したそいつに、俺は渋々ながら城に戻ってきた。
んで、今にいたる。
トイレ洗いとか食器洗いとか主に誰もやりたがらない仕事が俺には、回ってくる。だからか何か嫌な仕事があれば直ぐに俺が呼ばれる。
城についた途端にメイドに呼び止められ、害虫駆除をさせられた。ある意味俺も役にたってるらしく、何かあった時俺がいない怪しまれる。…これじゃなかなか逃げる隙がない。あの門以外に探そうと思ってたのに。
でも、まだそいつらにはバレてないらしい。あいつ言ってないんだな、良かった。響、様より国王様にバレるのだけはダメだ。国王様にバレたらそれこそ俺だけじゃなく、母さんも危ないから。
権力の違いってやつ?
とりあえず金さえ溜めたら…。
響、様は扉からレッドカーペットを歩いてくる。
俺はいつも通り、列の一番奥で他のメイド達と一緒にお辞儀をした。
「これ持てよ」
「………っ」
目の前までくれば、響、様は昨日同様俺に上着を放り投げた。
落とすわけにもいかず受け取り、視線を向けると嫌みったらしい笑みが伺えた。の野郎。
そしてまた口々に悪口が聞こえてきた。またあのブス女?、調子乗ってんじゃないわよ、響様ったらなんで…とか昨日より更に呟きが大きい。
別に調子になんかのってねぇっつの!
視線が痛い…。
あ、そういやこの上着って畳むんだっけ?
空中だから綺麗に畳めず雑だがとりあえず畳んだ。空中じゃなくても一緒か。
「…汚ぇな」
そして、受け取ったその畳み方を見てぼそりと呟いた。
悪かったな。
だったら俺に渡すんじゃねぇよ。
「謝んなさいよ」
俺が無言でいると誰かがそう叫んだ。
「そうよ、謝んなさいよ」
「ほら早く」
「響様に失礼でしょ」
「謝って」
それを先に次々と悪のりした言葉が俺に浴びせられる。
イジメ?何これイジメ?女って怖ぇ。
今、メイド達皆が俺を睨み付けている。早く早くとはやし立てられる。言いたい放題言いやがって。
「…申し訳ありません」
場の雰囲気に耐えきれず、頭を少し下げて俺は謝った。これで満足かよ。
「ちょっと気持ちがこもってないんじゃない?」
また誰かがそう叫んだ。
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