まさに女王様
2
「ちょっとそこの貴方、もっと気品良く歩けないの!?」
うぜっ。
不満が表情に出ようするも、どうにか抑えて声のした方に振り返る。
確か王のお気に入り、と言われている女だ。そのせいか調子にのってるって他の奴が噂してた。
「ほんと貴方ってたいして可愛くも無いくせに、なんで採用されたのかしら」
女は皮肉混じりに俺を見ながら言うと、俺の髪を掴んだ。
やべ、ズレる!
慌てて俺は髪を掴む手を払いのけた…
「響様よー!!」
その時扉近くにいた一人が叫んだ。
その言葉を聞いた途端に皆扉の前に整列していった。
目の前のお気に入りは扉の目の前まで、歩いていく。
俺も整列しねぇと。
皆二列に整列しているのを見て、俺も慌ててその最後尾に並んだ。
ガチャ…
お気に入りが中からゆっくり扉を開ける。
その奥から姿を現したのは、この城の次期党首…響と呼ばれた男だ。
いかにも我が儘そうな出で立ち。スーツにきっちり整えられた髪型を、崩しながらカーペットを歩いてくる。
「響様お疲れ様です」
「…あぁ」
皆口々に響様に向かって言い寄っていく。つか俺も響様って呼ばなきゃいけねぇんだよな。
まぁ上手くいけば姫?になれるわけだからな。
俺は別にただここで高級取りできたら良いだけだし。その辺は関係ない。つか俺は姫にはなれねぇし、なる気ないし。いやだ。
「おいそこのブス、これ持て」
そいつが俺の前を通る時に、言葉と共に何かが俺に向かって投げられた。反射で受け取れば、投げられたそれは上着。
…つかブスって俺?。まぁ別にどうでも良いけどな。
「あー…暑苦しい」
そう言ってそいつは、カッターのボタンを外して前を開けた。
「キャー!」
途端に高い声が聞こえてきた。慣れた、この声にももう慣れた。どうやったらこんな声だせんだ?つか叫ぶほどのことかよ。
「あ?…お前、畳む位しとけよ」
思わず耳を塞ぎそうに視線を逸らしていれば、俺の手中にある服がひったくられた。
俺は投げられたそれをそのまま受け取って立っていた。あぁこの場面では畳むもんなのか。
その言葉を聞いてか、隣にいた一人が最悪ー、とか言って罵ってきた。
そして俺を一瞥した後、お気に入りと一緒に自室へ戻って行った。
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