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まさに女王様
1


「ちょっと、しっかり動きなさいよ」



うるせぇな…。


こちとら腰痛めてんだよ。すっげー痛いんだよ、足動かすのも辛いんだぞ。朝っぱらから甲高い声で喚き散らすんじゃねぇよ。





早朝六時半。
毎日日課である七時からの食事の準備に、食堂の掃除、庭の水やり等仕事が始まる。まぁそういった仕事は俺には回ってくる訳もなく、今日も隣町から届いた物資の荷物運びやトイレ(女子用)掃除だ。どうも響様や王様に直接関わりのあるような仕事は人気があるらしく、そんな仕事は俺に回ってくることはない。
それにどうせやったところで、汚いとか言われるに決まってるしな。


そして、そろそろ……



「響様が来たわよー!」



またあの響様のお気に入りが皆に声をかける。

皆その声にはーい、と可愛らしい声で返事を返しながらいつもの二列の列に並ぶ。
俺もその列の最後尾にまた並んだ。

ギギィ…と扉横にいるメイドが扉を開けていく。

…あれ、この場所ってまた上着投げられる場所じゃ…?


「「おはようございます。響様」」


綺麗に揃った声が響いた。
開かれた扉からはその主、響様が顔を出して今日もまたレッドカーペットに足を運んでいく。

「おはよ」

軽い挨拶を返して響様はどんどん奥へと歩いて行く。
その速さに合わせ手前からメイド達が順番に頭を下げていく。

お、今日は上着も何も来てないみたいだな。良かった…。また睨まれるところだった、女ってほんと怖ぇんだよ。

徐々に近づいてくるその人物に視線を向けることができなかったが、直ぐ傍まで近寄って来た時には目線を上げてしまっていた。見たくない、て心の中で思ってても見てしまうのが人間の本心なんだろうか。


ほんの一瞬目があった。


その瞬間俺が視線を向けるのを見計らったかのように、響様、はニィと口元を歪め笑みを浮かべた。

身体が予想以上にビクっと反応する。





……ッ



…、あ…え、俺今一瞬、ドキッてした?
な、なんで…。
いやいやないない、何俺男相手にそんな感情抱いてんだよ!ドキッってあれだぞ、好きだからのそのドキッっじゃないぞ!目が合ったからびっくりしただけで、うん。

というか、反応しない方がおかしいだろ…!!
だ、だだだって昨日の今日だぞ!?昨日あんな事させられた相手見て平然となんてできるかああ!
なんでこいつはこんな余裕なんだよ…、慣れてるから?相手が男だろうが所詮は山程ヤッた内の一人、ってことか?

お前がそうでも俺はなぁ……!



「響様、朝食の準備ができております」

「あぁ」


そしてまたメイドに呼ばれ、響様は開かれた扉の方へ足を向け歩いていく。そして、その数歩後ろを日課であるお気に入り達が順番についていく。

後ろ姿を見つめながら、入っていった部屋の扉が閉まるのをただ見つめているしかない…。中に入り響様達へ朝食の準備をするのは、その仕事を任されたか、決められてる人達だけ。










一日でこの一家の連中に会うのは朝の挨拶や、何処かへ行く時のお見送りとお迎え等、いろいろある。その日によってばらばらで、1回だけの日もあるし。

今日は朝の挨拶以来、昨日の倉庫の掃除の続きを一日かかってやりここの連中とは誰とも会ってない。勿論、響様にもだ。


朝から重い物を持ったり運んだりで、マジで腰にきてる。正直男の俺でもきついぞ、この仕事。女がやるような仕事じゃねぇだろ、なんなんだあの女達の押し付けっぷり。悪意あるだろ。




「はい」

……。

「はい?」

……。

「だから、はい」

「え、だから、はい?」

帰って早く寝ようと歩みかけた時、目の前にある物が飛び込んでてきた。とても見覚えのあるそれ、はつい先日見たばかりの物。それを持ち、それを俺の顔の目の前に持ってきているのは先日のメイド。

その物っていうのは、少しトラウマになりかけているたぶん元凶の「フルーツバスケット」。

先日フルーツバスケットを無理矢理俺に響様に持っていくよう言ったあのメイド張本人。その子が用件も言わずまたしても俺にその物を押し付けてきた。


「はいじゃないわよ、頼んだわ」

「頼んだって何を…、い、嫌ですよ」

「私また王様に呼ばれてるから、それじゃぁ」

「え?ちょ、待っ。誰か違う人に…!」

渡されたそれを思わず受け取ってしまい、それを確認したメイドは時間がないとばかりに俺の話しも聞かずさっさと走っていってしまった。
俺に押し付けて行きやがった…あの女!!

はぁ?これを今から俺がまた届けに行け、と?

急いで時間を確認するが遅い…。この時間帯ならもう始まってるだろう、夜の時間ってやつが。


ちらっと、辺りを見渡してみる。数人のメイド達がまだ残っているようだが…。果たして俺の話しを聞いてくれるだろうか。
いや、でも響様に会う口実ができる訳だから普通に考えて持って行きたい、て答えるだろ。そうだきっと。ここの連中はだいたい響様ラブ、らしいし。住民がほぼ女のこの地域じゃ、金持ちの男ってのは取り合いになるわな。働き口は女性専門しかねぇし、貧乏な男はほんっと辛い。だからこんなことやってる訳で…。


とりあえずここにいる人達だけにも聞いてみるか。








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あきゅろす。
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