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まさに女王様
1
今この世界は貧しい。


街の中央に位置するその大きな城は、この街の権力者。いわゆる王と姫と呼ばれる王家の人達の家だ。

貧しいこの世。
金を持っているといえばその城だ。街の人々はそんな城で雇われている人達ばかりだ。…その位じゃないと、仕事がないから。

…それだけならまだいい。


その城で雇われてる人々は、全員女、だから。


そう、女しか雇っていないんだあの城は。
なんかメイド?ていうのか。そんなのが好きな趣味を持ってるそうだ、この街の王は。


そうなると、不平とか贔屓だって色々問題があがりそうだけど、…そうはならなかった。

何故かって?
今この街には、ほぼ女ばかりだから。



だから俺達男は城に雇ってもらえず、農業やらで勤しんでいる。





はずだった。








門を潜れば様々な女性服を着た女中が、迎えてくれる。

その中に慶(ケイ)もいた。

身長は少し高く、だが女の中には高い者も何人かいるため差して気にとめない。首筋から胸元を隠すように、ボタンを止めている。肌を余り露出しないその姿は、他の使用人とは違う。それも、胸が小さい為にそれを隠す為かと思い込む人ばかりだった。

頬から顔を覆うように長く垂れた髪は邪魔で、よく顔を伺えない。前髪も少し長く、横髪と邪魔で正面から見ても陰になり顔がよく分からない。

ストッキングに足首まで伸びたスカート。袖も手首まで伸びている。




身体を隠すように服を着ているのは、…男だからだ。


そう、俺は男なのに、女の格好をしてこの城で働いている。






それはついこの間。
父が残してくれた借金のおかけで、俺は借金取りに追われていた。そんな時ここで働けばすぐに金が溜まる、と話を聞いたからだ。

母が人質に取られる前にどうにかしないと。そう思った俺は女装してでも稼いでやる、とここにきた。



いやー、我ながら凄いと思う。


なんなくこの仕事に採用された俺はめでたくメイドの仲間入り。それはそれで悲しいけど。

…桂をかぶって肌を隠した女性服を着たこの姿は親には見せたくない。


ここで働き始めて数日、俺を見ている同じメイド?達から笑われることが多い。不細工ねぇ、とか地味とか言ってるのが聞こえる。
仕方無ぇだろ。他の女中は胸元を大きく開けたり、ミニスカだ。できるわけねぇだろ。
これ長スカートってだけで、めちゃくちゃキツいんだからな。


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