教育実習生のおにいさんA
1時間目のチャイムに急かされて、まもる先生を囲んでいた生徒が散っていく。
ゆうたもしぶしぶ席に着いた。
しかし、研究のため教室の後ろに立っているまもる先生の存在が気になってしょうがない。
座学に関して集中力がないのはいつものことだが。
落ち着かないまま1時間をやりすごす。


次の体育のために、カッターシャツを脱ぎかけたしょうじの席に駆けつけるゆうた。

「しょうちゃん!ねえねえ、まもる先生って何歳だと思う?」
「え?」

しょうじの表情が一瞬明るくなって、また不機嫌になった気がしたが、どういうわけだろう。
それは置いといて。

「教師でいちばん若いのが22歳だろ?教育実習なら21くらいじゃね?」

ゆうたはシャツのボタンを外しながら、朝の混沌の中で聞き出した情報を披露する。

「だよね、そう思うよね、けどまもる先生って大学入るのが遅かったから、今24歳だって」
「へえー」
「見えなくね?高校生でもいけそうだよな」
「ああ、まあそうだな」

ゆうたがとっておきの話題を持ってきたのに、しょうじはどこか上の空でベルトを外している。

「どした?気にならないの?」
「いや、そうじゃないけど、そこまでっていうか」

実はゆうただけが気づいたことだが、しょうじは自分の身に迫る危険を知らないようだ。
ゆうたはぐいとしょうじの首の後ろに腕を回し、額を付き合わせて声をひそめた。

「しょうじ、気をつけろ、あいつさっきからお前のことチラ見してんぞ」
「はあ?」
「いいから聞けって。ほらあいつホモって言ってたじゃん。しょうじ顔かわいいから狙われてんだよ」
「ばかかお前。んなわけないだろ」
「あ、ほら、そっと見てみ?今も一瞬目が合った」

しょうじはゆうたの腕を外すと、両手で握って説き伏せるように言った。

「あのなあ。教育実習生が生徒に手え出すわけないだろ?自意識過剰だって」
「自意識じゃなくてしょうじのことが…」
「わかったから。おれは大丈夫だから。とりあえずこの中途半端な着替えをなんとかさせろ」

見下ろすと、しょうじのスラックスはひざの位置でしわくちゃになって、身動きがとれない状態だった。
ちょっとまぬけな姿もそそられるが、時間がないのでゆうたもそそくさと着替えの続きをした。
教室を出るときにさりげなくまもる先生の様子を伺う。
女子たちに囲まれながらも、やはり隙をみてこっちに視線を向けてくる。
寒気がした。

「しょうじ、いくぞ」
「おわっ」

ゆうたはしょうじを視線から隠すように前に押し出して、小走りで校庭をめざした。



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