恋心来いA
「今日さあ、うち来ない?」
朝っぱらからそんなことを言われて、平常心で過ごせるほど、しょうじは大人でも子供でもなかった。
お陰で、退屈なだけの授業中、頭はよからぬシーンでいっぱいだった。
わざわざ家に呼んで、家でしかできないようなプレイでもするつもりだろうか。
それとは一体どんな。
「(あーなんだこれ。期待してるみたいじゃん。もうやだおれ)」
妄想の中でしょうじは、ベッドに縛り付けられたり、全裸で鏡に映されたり、四つんばいで排泄、他にもいろいろした。
そしてそれぞれをされたときにどんな気持ちか、しょうじは想像してみた。
衝撃的なことに、また絶望的なことに、嫌ではなかった。
「(おれまで変態かよ…)」
しょうじの発達途上のちんこは一日中反応しっぱなしだった。
業後、帰り支度をすませる。
都合よく今日からテスト週間なので部活がない。
「しょうじ!」
ゆうたがかばんを肩にひっかけて、しょうじの机にやってきた。
「帰んぞー」
クラスメイトの誰にでも振りまく、屈託のない笑顔。
しかしその笑顔の下にはしょうじしか知らない本心がある。
「おお」
しょうじの返事はどことなくぎこちなくなってしまう。
もともと小学校が別々だったので予想はしていたが、ゆうたとしょうじの家は、中学校をはさんで反対方向だった。
しょうじは見知らぬ道を、ゆうたと少し距離をあけて並んで歩く。
「この公園できみくんとかとキャッチボールしてんの」
「ふうん」
「ちっちゃい頃ここんちの犬に追いかけられて噛まれてさあ」
「ふーん」
どこに行っても会話のテンポはあいかわらずだ。
しょうじはよく話題が尽きないな、と感心するしかなかった。
頭が他のことでいっぱいで、気の利いた返事がおもいつかない。
「見えたー。あれおれんちね」
「(とうとう来てしまった…)」
ゆうたの部屋は、4人家族の一般家庭に見合った、こぢんまりした洋室だった。
思った通りというか、惨事とまではいかないまでも、どちらかというと綺麗とは言いがたい。
教科書、プリント、漫画、ユニフォーム、ダンベル類、ちょっと引いたのが脱いだ後っぽい靴下。
「まあ座れよ」
ゆうたはそれらを無造作にかき分けて、部屋の真ん中にスペースを作る。
ベッドの上のがらくたも部屋の隅に放り投げ、ゆうたはそこに座った。
しょうじはおずおずと部屋の穴に腰を下ろした。
向かい合うけれど、なんだか目は合わせられない。
「………」
「………」
「(おいおい何この間…勘弁してくれよ…)」
「なあしょうじ」
ふいにゆうたが声を掛けてきた。
やましいことはないはずなのに、しょうじは過剰に驚いてしまう。
返答は俯いたまま。
「あ?」
「あんさー」
「おお」
「えっとさあ」
「なんだよ」
「お前さあ」
「うん」
ゆうたはぐだぐだともったいぶった後、言った。
「オナニーどうやってる?」
しょうじの身体に稲妻が落ちた。
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