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ゆめ
あめ玉/白ひげ



小さい頃から、あめ玉を噛み砕いてしまうクセがあった。





飴が口の中で小さくなっていく時の、あの虚しさに耐えられない。




「…どうせなくなるのなら、
自分から壊したほうが気が楽でしょ?」



「グラララ…相変わらず歪んでんなぁ」




膝に座って、もらったばかりの飴を噛み砕くわたしを、父さんは咎めることもせず頭を撫でてくれる。





「…なくなった。

父さん、もうないの?」



「ちょっとまてよ……


あぁ、こいつで最後だな。」


そう言って父さんが取り出したのはピンクの飴。
見るからにイチゴ味。

差し出された飴を取ろうとして、わたしの手は空気を握った。


父さんは口元に飴を持っていきニヤリ。



「えー…くれないの?」


「お前が大事に食わねぇからだろうが。」



むくれていると、父さんの口元に運ばれたあめ玉がガリッと音を立てた。



「…ほら、大事に食えよ。」
「うむッ!?」




放り込まれたのは半分に欠けたあめ玉。





…そういえば、小さい頃に飴を食べるときは決まってこうしてくれた。




今思えば、こうしてもらえるのが嬉しくて


父さんの前でだけ早く噛んじゃうクセがついたんだ……



あぁ……小さい頃から少しも変わらない父さんの態度が心地よい。

もう少しだけ、あなたがくれる底無しの甘さに溺れていたい。




「…父さん、大好きっ!!!」

「グラララ…当たり前だ!!」



ポカポカ陽気のこんな昼下がり。



いつかはなくなる言葉だけの父さんとの関係は、

自分から壊すなんてこと絶対にしないから。






あめ玉とは違う甘さを君に。





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あきゅろす。
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