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#誰よりも素直



部活が終わり、着替えてから美術室へ向かう。
部活中に見えていた美術室の中には、今日もいつもの4人がいた。正式には存在していない「美術部」の部長ペリーヌ、新入部員のリーネ。あとの2人はペリーヌをからかう目的半分と暇潰し半分のハルトマンとエイラ。楽しそうに話している4人を、少し羨ましいなと思ったりも…。



「お疲れ様です、シャーリー先輩」
ねぎらいの言葉に顔を上げると、美術室に鍵をしたペリーヌがこちらを向いていた。もはや美術室までの道を身体は覚えていて、あたしが意識しなくても辿り着けるまでになってたらしい。少し驚いたあたしが曖昧に返事をすると、ペリーヌは首を傾げた。


「……何か、ありまして?」
最近のペリーヌは、単語単語を1つずつ区切ってハッキリ話すようになっている。自身のキツくなりがちな物言いに後悔しているみたいで言葉を選ぶような話し方だ。あたしや色んな人を傷つけないようにと、勢いを無くした話し方は一種の寂しさを感じさせる。



「いーや、なんともないよ」
寂しさを払拭するようにニカッと笑うと、ペリーヌは一瞬の間を置いてから顔をそらした。言葉に気を付けようとしても、根っからの照れ屋気質は簡単には直せないらしい。






「せっかく二人乗り出来るように新しい自転車買ったのになぁ…」
愛用のマウテンバイクを手で押しながら坂道を下っていると、いつもこう呟いてしまう。山道と表現してもおかしくない通学路をママチャリで二人乗りしながら下っていくのはさすがのあたしでも危険だろうと思い自重しているんだけど、マウテンバイクを挟んだ隣を歩くペリーヌは何度目か分からないあたしの呟きに返す気もないようで聞こえないフリをした。


「ペリーヌも歩くの疲れないかい?」
あくまで無視を続けるペリーヌに声をかける。独り言だと思われないように、きちんと疑問文にして。するとペリーヌはあたしの顔を見ては口を開きかけて、視線をそらしては言葉を飲み込む。そんな仕草を何度か繰り返した。きっと、言葉に気を付けたいペリーヌと素直になれないペリーヌが交じりあってるんだろう。


「あのさ、ペリーヌ」
あたしは前を向いたまま言葉を続ける。ペリーヌはこっちを見てくれてるんだろうか。


「気を遣うことないよ。ペリーヌはペリーヌの言葉のまま、あたしと話をしてくれないか?」
今さらだしね、と笑ってペリーヌに目を向けると慌てて視線をそらされた。あたしが向くまではこっちを見ていてくれたんだ……。


「……ですが、わたくし、先輩の前だと…」
唇を尖らせながら小さな声で紡がれる言葉。一言も聞き逃さないよう、あたしは耳を澄ました。


「……誰よりも素直になれませんもの」
ペリーヌの白い肌は真っ赤に染まり、その言葉と反応が何よりも素直であることに気付いてないみたいで、思わず吹き出してしまった。


「なっ、なんですのっ?!」

「いや、うん。大丈夫。ペリーヌは今まで通りでいいんだよ。素直とか気にしなくていいよ」
ペリーヌが誰よりも素直だなんて、あたしは分かってるからさ。
……そう言えば、"素直じゃない"ペリーヌはどんな反応するんだろうね。







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あきゅろす。
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