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DIVE!
訓練生の飛行訓練が終わり、宿舎へと帰ろうとしている所だった。

訓練用のストライカーユニットを倉庫に戻してからバルクホルンはふと陽射しの強い空を見上げた。気持ち良い天気で、空は青々としている。


(坂本少佐の気持ちがよく分かるな。……私はまだ空を諦められずにいるのか)
自嘲気味にそんな事を考えている時に、突然だった。
バルクホルンのいる訓練場より遥かに高い、宿舎の屋上から誰かが自分の名前を呼んだ。


「トゥルーデー!」
呼ぶ声が聞こえたかと思えば、自分の頭上にだけ影ができ、みるみる内にそれは大きくなっていった。


(誰かが、空から降ってくる……!?)
そして、数秒もたたない内に誰なのか分かった。


「ハ、ハルトマン!?」
バルクホルンは目を見開き、上空から降ってくる彼女の名を叫ぶと反射的に、落下予測地点まで移動した。落下の衝撃を考えると自然と使い魔の耳が現れ、バルクホルンの身体を青白い光が纏った。


「なっ、ば……!」
珍しく素っ頓狂な声を上げながらも落下してきた彼女の身体を受けとめたバルクホルン。視線が合うと、エーリカは何事もなかったかの様に「ありがと」と笑ってバルクホルンから飛び降り、走りだそうとした。


「ま、待たんか!」
バルクホルンはエーリカの首根っこを掴んで彼女に待ったをかける。エーリカはその場で駆け足をしている。


「ユニットも履かずにあんな所から飛び下りるなんて何を考えてるんだ、お前は!」

「あはは、ごめんごめん。つい急いでて」
駆け足を一向にやめる気配はない。「つい」でやっていい事ではないだろう、さっきの事は……と、こめかみを押さえた。


「……もし私が受け止めるのを失敗したらどうするんだ」
バルクホルンがそのまま「大怪我じゃ済まんぞ」と言おうとした時、エーリカが途中で言葉を発した。

「トゥルーデなら受け止めてくれるって分かってたよ」
彼女は笑顔で言った。

「は?」

「完全に魔法力がなくなったわけじゃないんだし、あれぐらいの高さならトゥルーデの怪力があれば怪我もしないよねー」
バルクホルンは思わず一瞬、ぽかんと。ホントに間抜けな顔をしてしまい、エーリカの首根っこを掴んでいた手の力を緩めてしまった。


「じゃね!」
その隙に、と言わんばかりの勢いでエーリカは走りだした。

「……あ、おいっ!」
我に返って、慌てて振り向いたが、ウルトラエースの姿はすでに見えない。


「……」
バルクホルンは彼女を受け止めた腕を見つめながら、内心嬉しく思った。


(魔法力は完全になくなったわけじゃない、か……)
エーリカらしい、さりげない励ましに頬が緩んでいた。

(礼を言うのは無茶をした説教の後だな。……覚悟しておけ、エーリカめ)
すぐに頬を引き締めてエーリカの後を追うバルクホルンは、どこか楽しげだった。




――――

魔力減退が始まったお姉ちゃんと相変わらずウルトラエースの天使。


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