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人はそれをツンデレと呼ぶ
「……なんで、増えてるんだい」
咲音ちゃんに連れられてやってきたのは、マスターの家よりずっと大きい「これぞ和!」って感じの家。大きな門とか玄関があったのに、わざわざ裏まで回って生け垣の下に出来た抜け穴をくぐっていると聞こえてきたのは呆れた声。


「おばあちゃん、こんにちは!」

「こんにちはー」

「こ、こんにちは…」
咲音ちゃんがこの家の住人であろうおばあちゃんに挨拶したのを見習って、ミクも元気良く挨拶した。さらにそんなミクに続いてリンちゃんも遠慮気味に挨拶。

穴から出てきたミク達はズボンや服についた砂を払って立ち上がると何故かおばあちゃんは頭を抑えて、ため息。だけど咲音ちゃんは気にする様子もなく、おばあちゃんにミク達を紹介しました。


「あのね、おばあちゃん。こっちの2人はミクちゃんとリンちゃん。私のご近所さん」
名前を呼ばれた時に頭を下げたけど、おばあちゃんはあまり興味ないみたい。そっぽを向いて、大きな大きなため息をついた。


「不法侵入者には興味ないよ」
と一言呟いて、おばあちゃんは家の奥へと戻っていった。……ふほーしんにゅーってなんだろ。帰ったらマスターかグミちゃんに聞いてみよ。


「どうするの、咲音ちゃん…」
リンちゃんが心配そうに咲音ちゃんを見た。けど咲音ちゃんはニコニコ笑ったまま大丈夫だよ、と。


「ここに座って待ってると、お菓子持ってきてくれるから」
咲音ちゃんはおばあちゃんが不機嫌そうなのも気にしてないように、縁側に腰掛けて隣をポンポンと叩いた。きっとミク達にここ座れってことなんだろうなぁ。
その誘いに乗ってミクは咲音ちゃんの隣に座り、リンちゃんはミクの反対側の隣に座った。何をするわけでもなく、ただ3人ともボーッと立派なお庭を見ているだけ。

うちにもお庭はあるけど、芝生が敷き詰められていて花壇にはメイコお姉ちゃんが世話してる花がたくさん植えられている。ここのお庭は地面は砂利だし緑は生け垣以外にあまり見当たらない。でも小さな池はあるし……旅行番組なんかで見たりするようなお庭で、お庭にも色々あるんだなーって感心しました。


ギシ、と床板が軋む音が聞こえて後ろを振り返るとお盆を持ったおばあちゃん。

「勝手にくつろいでんじゃないよ」

「あ、スイカ」
咲音ちゃんはおばあちゃんと会話する気ないのかな。気のせいか、おばあちゃんは眉をぴくりと上げたように見えた。ミクもよくマスターに「会話成立させろ」って注意されるけど、咲音ちゃんも相当だ。


「おばあちゃん、ありがとう!」
くれるなんて一言も言ってないのに、咲音ちゃんの中ではあのスイカはもうおばあちゃんが持ってきてくれたお菓子らしい。おばあちゃんの方を見ると、口はへの字に曲がっているけど包む雰囲気はどこか優しげ。リンちゃんの膝を小さく叩いておばあちゃんを見るように促すと、リンちゃんもそれに気付いて微笑んだ。
ミクとリンちゃんがニヤついて…いや、微笑んでるのに気付いたのか、おばあちゃんはすぐさま眉間に皺を寄せてお盆をわざと乱暴に縁側に置いた。



「ふん。それを食べたら早く帰るんだよ」
咲音ちゃんを見ると、ウィンクされた。「言った通りでしょ?」って事だと思う。ミクとリンちゃんは同時に吹き出して、おばあちゃんを見上げた。


「ありがとう、おばあちゃん」








――――

おばあちゃんシリーズ。
あの咲音ちゃんは増田さんちのルカさんに恋心を抱いている咲音ちゃんでした。おばあちゃんがツンツンするのが可愛くて仕方ない。

おばあちゃんは関係ないけど、ちょっとおまけ↓





晩ご飯。
ミクは今日の事をマスターやメイコお姉ちゃんに話そうと思いました。


「あ、そうだ。マスター、質問」
お味噌汁に口をつけたところだったのか、マスターはお椀を口元から離してミクの方に視線を向けました。


「えっと…ふほーしんにゅーってなんですか?」
マスターの動きが止まる。メイコお姉ちゃんもその隣に座るグミちゃんも驚いた顔でミクを見ました。説明が足りなかったのかな、と思い、ミクは更に付け足しました。


「今日、咲音ちゃんとリンちゃんとでおばあちゃんとこに行ったら、ふほーしんにゅーしゃって」
言われて……と、続けようとしたらマスターがお味噌汁を吹いた。マスターの前に座っていたメイコお姉ちゃん、斜め前のルカさんは今度はそっちに驚いたようで、ミクの疑問はうやむやになりました。

まぁ、部屋が一緒のグミちゃんに後で聞いたからいいんだけど。



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