[携帯モード] [URL送信]
戦線ニ異状ナシ
「こーんにちはー!」

玄関の鍵は開いてたので勝手にお邪魔しまーす。
自分の家のようにドタドタと上がらせてもらってリビングのドアを開けると、そこにはユキちゃんとルカさんが居ました。


「こんにちは!」
私がもう一度挨拶すると、ルカさんは優雅に、ユキちゃんは可愛らしく「こんにちは」と返してくれます。

私がこの家に遊びに来る時は大抵この2人が留守番してます。いつもぴったりくっついていて……羨ましいです。ルカさんはちょっぴり苦笑い気味だけど、ユキちゃんはそれに構わず、私に見せ付けるようにルカさんにひっつくのです。マジ計算高いと思います。




……紹介が遅れました。私、咲音メイコです。この家の近所に女性マスターと2人で暮らしています。
ある日、買い物の帰りに見掛けたルカさんに一目惚れしてからこの家にお邪魔するようになりました。ルカさんは理想の人です。クールだし、物腰柔らかだし、知的だし。
お知り合いになったんだから猛烈アタック仕掛けるゾ☆と思った矢先に見えてきたのはユキちゃんという小悪魔的な存在。同じ家に住んでるという圧倒的なまでのアドバンテージを振りかざし、ルカさんに迫る彼女。……う、羨ましい!

しかも自分が子供である事すらも最大限に利用してくるから手に負えません。ルカさんは優しいから子供に甘いんです。嫌でも嫌と言わないんです。ホントに素敵です、ルカさん。だから大好きなんです。
……まぁ、私にも有利な点はありますけどね。




「ルカお姉ちゃん。ここの問題なんだけどね……。」
私の方をチラリと見た小悪魔はそんなことを聞きながら、さりげなーくルカさんの隣に座り、詰め寄りました。そんなに近づく必要ないでしょってぐらいに近いです。
ルカさんはどこですか?と小悪魔の行動に疑問を持たずに話を聞いてあげてます。


「私が教えてあげる!」
ルカさんを間に挟むように、ルカさんの隣に座ってユキちゃんが差し出していた算数のプリントを自分の前にずらしました。


あっ、と小さく漏れ聞こえたユキちゃんの声は無視して答えを書き込んでいく。
マスターが学生でよかった!いつも小難しい計算ばっかりしてる理数系のマスターでよかった!


全問解き終えて「はい!」と渡すと、ルカさんが苦笑しながら言いました。


「咲音さん、ユキちゃんの宿題は答えを教えるんじゃなくて解き方を教えてあげるんですよ。」

「え。」

「自分でやらなきゃ意味がないんだよ。」

「え?」

そんなルール知らないけど、なんて言えるはずもなく恥ずかしさを隠すように頭を掻くと、ルカさんは笑いました。


「それにしても、小学生の問題とは言え……早いですね、解くのが。」
褒 め ら れ た !
ルカさんに褒められましたー!

「いやぁ……。」
私がデレデレした笑顔でいると、ユキちゃんが睨んでいるような気がしました。


私の唯一の利点。それがこの外見です。
ルカさんはめーちゃんが大好きです。そして私とめーちゃんは姉妹……みたいなもので見た目はそっくりです。だからルカさんは私にも少し優しい気がします。

……例え、ルカさんが私にめーちゃんを重ねているんだとしても、私を見ていることには違いないんです。ユキちゃん同様、使えるものは最大限利用すべきです。恋には卑怯な手とかありませんからね!





梅雨時の晴れた日。
じめじめする蒸し風呂のようなリビングに私とユキちゃんとルカさんは変に寄り添いあってました。
買い物から帰ってきためーちゃんに「こんな暑い中、何してんのよ。」と呆れられたのは言うまでもありません。



.

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!