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しりとり
「リーンーちゃんっ!」
小さなその背中に飛び付くと、リンちゃんはびっくりしたように肩を跳ねさせました。その拍子にリンちゃんが持っていた楽譜が数枚落ちました。



――時間は午後1時。少し暑いぐらいの日差しも相まって、リンちゃんと引っ付いたミクの胸の辺りは若干蒸し暑いです。

リンちゃんは苦笑いしながら落ちた楽譜を拾って、ミクに振り返りました。

「どしたの?ミク姉。」

「しりとりしよう!しりとり!」


あまりにも突拍子すぎたミクの提案に、さすがのリンちゃんも首を捻るばかり。

「急だね、ミク姉。」

「だって暇だし。じゃあミクからね。えっと、しりとりの『り』からだから…………リンちゃん愛してる!……はい、次は『る』ね。」

リンちゃんの意見は軽く流して勝手に始める。だってリンちゃんはなんだかんだでミクに付き合ってくれるのを知ってるから。


「そんな文章みたいなのもアリなのっ?」

「ミクルールを採用してるからね!」

「うぅーん……。えっと、じゃあ……ルカ姉が目標。」

「う、浮気者……!」

「えぇっ?しりとりだよねっ?」

そうだよー、と頷くとリンちゃんは安心したように胸を撫で下ろします。……まぁ、リンちゃんの口からミク以外の名前が出るのはあまり喜べないのは確かだけども。

リンちゃんがうーんと唸りながら考えていると、グミちゃんが2階から下りてきました。

「……何やってるの?」

「しりとりだよー。」

「……そっか。」
グミちゃんは我が家ではおとなしめの子です。


「グミ姉も一緒にしようよ、しりとり。」
そんなリンちゃんの誘いにグミちゃんはミクの方を見て、視線だけでいいの?と確認してきました。

そうです、グミちゃんは空気が読めて気遣いも出来るんです。本当はリンちゃんと2人きりでラブラブしりとりをしたかったけど、グミちゃんは良い子だし……ということで、ミクは頷きました。


「……じゃあ、入れてもらおうかな。」
そう言いながらちょっと笑顔になってミクの隣に腰掛けるグミちゃん。

「私の次がグミ姉ね。えっと……ノーベル賞。」

「……討ち入り。」

なにそれ。
ミクとリンちゃんがグミちゃんに視線を向けると、グミちゃんは「敵の陣地に攻め入ること」と説明してくれました。さすがグミちゃん!我が家で一番の秀才!
そして、ミクに『り』を回してくれるさりげない心遣い。この世にもしもリンちゃんがいなかったら、グミちゃんを好きになってたかもね!……まぁ、リンちゃんのいない世界には用はないんですけどね。
とにかく、グミちゃんのミラクルパスは見逃しません。


「り……リンちゃんはミクの嫁!」
バチコーン!とリンちゃんにウインクしながら言うとリンちゃんは苦笑。

「えっと……メキシコ。」

「……小春日和。」

「リンちゃん可愛い!」

「いー……イタリア。」

「蟻。」

「リンちゃん大好き!」

「き、京都。」

「とっくり。」

「リンちゃんは天使!」

「……っ、ミク姉っ!」

ミクの熱烈ラブコールにリンちゃんは顔を真っ赤にして照れてます。そんなリンちゃんを見て、笑いをこらえるグミちゃんとミク。


あぁ……。どこかの片想い連鎖とは違って、ミクたちは平和そのものです。



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