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ささやかな贅沢
「……暑いんですけど」
日傘をさしながら砂浜を歩くペリーヌ。さっきから文句をつらつら言ってるけど、結局はこうしてあたしの突拍子のない提案にも付き合ってくれる。
足が濡れるのを考えてか、タイツを履いてない素足は珍しく、白い故に太陽に照らされたそれは眩しくも見えた。



「まぁ、夏だしね」

「あなたが誘わなければこんな暑い中、わざわざ出歩いたりしませんわ」

「はいはい。それは悪かったよ」
浜辺の散歩に誘った理由なんて大してない。強いて挙げるなら、単なる暇潰し以外言い様がないぐらいだ。それを察してくれたのか、ペリーヌも理由は聞いてこない。文句言いながらも暇潰しに付き合ってくれるなんて、ホントに可愛らしい奴だとつくづく思う。


「海入る?」
2人でいて話がないのは珍しくないけれど思い付きで提案すると、それはもう「何言ってんだ」と言いたげな表情であたしを見た。それでも口には出さない辺り、あたしといる事に慣れてきてくれてる事なのかなと内心嬉しくなる。


「水着なんて持ってきてませんから遠慮しますわ」

「…残念」
あたしの方には振り返る素振りもなく、ペリーヌはさっさと前を歩く。日傘を少しだけ回しながら歩く姿に笑みが零れてしまう。



何もなくていい。
ずっと、こういうのんびりした時間が流れたらいいのにな、とぼんやり考えた。
それは、ささやかで、けれどこの世で一番贅沢な望みなのかも知れない。


「……だらしない顔してますわよ」
ようやく振り返ったペリーヌは、やれやれとため息混じり。


「こうしてデート出来るのが嬉しくてね。ロマンスの基本にして王道なんだろ?浜辺でデートは」

「…まさか、そんな理由で誘ったんじゃ」

「や、誘ったのはホントに暇潰しだよ。理由なんていくらでも後付けできるって」

「……暇潰し、ですか」
都合の良いように解釈すると、ペリーヌは気持ちトーンダウンしたように見えた。


「なんて言ってほしかった?」
からかい半分で聞いてみると、ペリーヌは頬を真っ赤に染めた。


「べ、別に。暇潰しに付き合ってあげても構いませんわ」
必死に否定するその態度がすべてを物語っているっていうのは……面白いから黙っておこう。





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