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一番は空けておいて
――身体が重い。思うように動かせない……。
息苦しさを感じた私の意識は徐々に覚醒してきた。
いつもならすぐさま目を開けて現状確認をするが、今晩はどうにも眠くて仕方ない……。カールスラント軍人たるもの、こんなことでは情けない。
そう思う反面、この不可解な現象をゆっくり考えている自分もいた。これが「金縛り」というやつなのか?
意識は覚醒しつつあるが、かかったモヤは晴れないから考えが上手くまとまらん。

……えぇい!らしくはないが、考えるより行動してみるしかない。
私はそう思いつつ、重たい瞼をゆっくりと開いた。そうして目に入ってきたのは暗闇にはないはずの明るい黄色……いや、よくよく見れば見慣れた金髪だ。


「……エーリカ」

「あ、起きちゃった?」
ごめんねー、と誠意のない謝罪を口にしたエーリカは私の腰あたりに跨って、両手を顔の横についている。


そうだな、まるで押し倒されたよう……押し倒された?!


「なっ、何をしてる!?」
冷静に現状を把握してから、ようやく事態の不自然さに気付いた私は声を上げた。勢いで身体を起こそうものならエーリカとキスしかねないので仰向けの状態で問い詰めるが、これでは様にならない。
寝たまま怒る私が、余程滑稽に見えたのか、エーリカはくすくすと笑った。

「……ど、退かんか」

「まだダメー」

「はぁ?」
エーリカは時計をちらりと確認してから、私の話を拒否した。なんなんだ、このおかしな体勢は。
まだ眠気は取れないし、エーリカは珍しく黙ったままで……もういっそ、このまま寝てしまおうかとも思ってしまう。エーリカのことは諦めて再び睡魔に身を委ねようと目を閉じたら、エーリカは小さく「あ」と声をもらした。


無視だ、無視。私はもう眠いんだ……明日も朝から訓練があってだな……。お前もたまには時間通りに起きる努力をしろ、と言い掛けた言葉は声に出来なかった。



「誕生日おめでとう、トゥルーデ」
意識を手放しかけた瞬間、頬に柔らかい感触と耳には暖かい吐息、鼻を掠めるくすぐったさを感じて、目を覚ました。突然の出来事に私は目を見開いてエーリカを見るが、こいつは黙ったまま時計に視線を向けた。
私もつられてそっちを見ると、針は0時を過ぎている。
エーリカは笑いながら、ようやく私の上からおりてベッドの端に腰掛けた。



「これからもずーっと私が一番にお祝いするからね」

ミーナがよくするように、立てた人差し指を口元にあてて微笑むエーリカ。私はどうにか返事をしようと試みるが襲い来る睡魔がそれを許さない。……あぁ、意識が落ちる刹那に呟いた「ありがとう」はエーリカに届いただろうか?





――――


お姉ちゃん誕生日!


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