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ヒーローの時間
(スマプリ)



やよいちゃんは今日もスケッチブックにペンを走らせている。席が一番前であるにも関わらずそんな事をするんだから、結構肝が据わってるように思う。
わたしは授業を聞くふりをしながら、ずっとそのスケッチブックを見つめていると、どこか見覚えのある5人組が目についた。
赤、青、黄、緑、ピンク……戦隊モノの王道5色。色が塗られる前の絵で「もしかすると……」とは思っていたけど、色がつくとわたしの疑惑は確信になる。


やよいちゃんも戦隊モノ見てるのかな……。
休み時間になったら聞こうと考え、消されそうになる数式を慌ててノートに書き写した。




授業が終わっても、やよいちゃんは絵を描くのに夢中。あかねとみゆきちゃんが近寄って、ようやく彼女も顔を上げた。わたしも3人に近付くと、みゆきちゃんが笑顔を向けてくれた。

真っ直ぐすぎるみゆきちゃんの笑顔に同じく笑顔を返してやよいちゃんの前まで行く。


「やよいちゃん、ひとつ聞いてもいいかな?」

「?」
やよいちゃんはスケッチブックを机の中に片付けながらわたしの目を見てくれた。

「やよいちゃんって、戦隊モノ見るの?」
何気なく聞いてみた。ただの興味本位で、それ以上の意味はなかったのに、やよいちゃんは顔を真っ赤にして瞳がうるうるし始めて、……そう、今にも泣き出してしまいそうになる。


「えっ?……えっ?」
何か聞き方が悪かった?とあかねとみゆきちゃんに目線を配るけど2人は苦笑い。


「ちょっ、や、やよいちゃん?」

俯くやよいちゃんにわたしは慌てる。泣く子の扱いには慣れてるつもりだったけど、やっぱり妹や弟と、やよいちゃんは違う。どうしていいか分からない。きっと、今のわたしの顔が「情けない顔」っていうんだろう。


「なんやその顔」
ぷっ、とあかねが吹き出したけどわたしはいつもみたいに言い返せない。


「だ、だってさ、いきなりだし……」

「あー、別になおは悪ないねんて。ただ、やよいは」

「あああああかねちゃんっ」
真っ赤になったやよいちゃんがあかねの口を塞ごうとする。ますますわたしは分からなくなる。そんなわたしを見たみゆきちゃんがようやく、やよいちゃんの説得?を試みてくれた。


「ね、やよいちゃん。なおちゃんには隠す必要ないんじゃないかな?同じプリキュアだし」

「そうそう。それに、なおがそんなんに偏見持ってるとは思われへんし」

隠す?偏見?
よく分からないけど、2人の話から、やよいちゃんはわたしに何か秘密事があるんだろう。でも、あかねの言う通りで、わたしはやよいちゃんがどんな秘密を隠してたとしてもそれを理由に嫌いになったりしないと思う。

膝を折って、視線の高さをやよいちゃんと合わせる。やよいちゃんは目線をきょろきょろ泳がせて、観念したように息を吐いた。


「……なおちゃんは、その、漫画とか……そういうのに嫌いなんだよね?」

「え?」
確か、前に男子が学校に持ってきていたのを見た時にそんな感じのことを言いながら注意したような気がしないでもないけど……。


「そっそれに……やっぱり恥ずかしいし……」

……なんとなく話が見えてきたかも知れない。意外と言えばそうかも知れないけど、そういえば後ろから見ていたスケッチブックには弟が好きなアニメのキャラもいた気がする。


「話は戻すけど、やよいちゃんも戦隊モノとか見るの?」

わたしの問いに、やよいちゃんは口をもごもご動かす。恥ずかしいけど、というかすかな声と同時に頭が小さく動いたのをわたしは見逃さなかった。


「よかった。話出来る人見つけた」
ニコッと笑いかけると、やよいちゃんはさっきのわたしみたいに「えっ?」と声をもらす。



「面白いよね、戦隊モノ。わたしもよく見てるんだ」

「……なおちゃんも?」

「うん。最初はゆうたとかこうたに付き合って見てたんだけどね」
わたしが恥ずかしそうに頬を掻くとニヤニヤしたあかねが割って入ってきた。


「なんや、なおのがハマったんか」
まぁ……と頷くと、あかねはなんやそれ、と笑うしみゆきちゃんもなんだか楽しそうに笑ってる。

わたしは恨めしそうにあかねを見てからやよいちゃんに視線を戻した。


「面白いからいいんだよね。……ね、やよいちゃん?」
もう一度笑いかけると、今度はちゃんと笑顔を返してくれた。





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あきゅろす。
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