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こんな想い知らなかった


ブリタニアの基地に来て、早1ヶ月。こっちの生活に慣れたと言えば慣れたけど、未だに慣れないことがある。

あのガリアの貴族令嬢とカールスラントの堅物だ。

あたしは特定の人間に好き嫌いの感情抱かないけど、あの2人とは根っからが合わないんだろうな、と思う。特にガリアの中尉はあたしと話すのを極力避けてるようにも思える。今だって、起きてきたあたしをじっと見ているくせに声をかけてくる素振りはない。
まぁ、用がないならそれでいいんだけど。そう思いながら朝食を済ませたあたしは食堂を後にした。



「イェーガー大尉」
聞き慣れない呼び方と声に振り返ると、珍しい。ガリアの中尉があたしの後を追い掛けてきたみたいだった。


「……なに?」
朝から小言は聞きたくないあたしは少し顔をしかめてしまった。つられて彼女もいつものしかめっ面になる。


「ネクタイが曲がってますわよ」

彼女はあたしのネクタイを指差しながらハッキリと言った。ネクタイぐらいちゃんとしたらどうですの、だとか、たるんでる証拠です、とか色んな小言が聞こえたけど、彼女がネクタイの曲がりを直す為に縮めた距離にドキドキしてしまい、そんな注意は頭に入ってこなかった。
これだけの為に追い掛けてきたのか、といつもみたいにからかいたかったけど何故か言葉が出ない。


「……どうぞ」

「あ、あぁ…」

「服装の乱れはみっともないですわよ」

「そうかい、気をつけるよ」
それでは、と会釈した彼女はまた来た道を戻っていく。あたしは直されて真っ直ぐになったネクタイに手を添えて、しゃんと伸びた背中の彼女に声を投げ掛けた。


「ありがとう、ペリーヌ」
彼女はやっぱり振り返らなかった。




title:確かに恋だった

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