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あの子に似てるから
――スマートに。
そう、何も緊張することはないはず。いつも通りに、普通に接すればいいだけじゃないか。


私は自分にそう言い聞かせながら食堂の前で深呼吸をし、後ろ手に隠し持った包みをギュッと握った。


「エイラ、頑張って…」
私の隣にいたサーニャが声を掛けてくれて、私はそれに情けない声で頷いた。




今日はリーネの誕生日。夜に隊の皆でパーティーをするみたいで、皆はその準備に追われている。

サプライズを仕掛けられるリーネは何も知らずに今日の昼食の準備をしていて、夜間哨戒明けの私とサーニャはリーネにパーティーの準備をしてるのがバレないように相手をする任務を任されたわけだ。


「で、でも……渡したら気付かれないか?」
内緒にしてるはずなのに、誕生日プレゼントなんか渡したら気付かれやしないか不安になった。
しかしサーニャは首を振る。


「皆、もうプレゼントは渡したみたいよ?」

「え、渡した?」
バレないようにしなきゃいけないんじゃなかったのか?と私が首を傾げるとサーニャは笑った。


「パーティーを企画してるのがバレちゃいけないだけよ」

「え、あ……そっか」
早とちりだ。これは恥ずかしいぞ…。私は照れ隠しに頭を掻いて、誤魔化すように笑った。サーニャも微笑んでもう一度「頑張ってね」と励ましてくれた。



「……よ、よし。行って来る」
今度こそ、と大きく息を吸って食堂に入った。視界の端でサーニャが頷いたのが見えた。



「エイラさん、どうかしたんですか?」
厨房にいたリーネは私に気付くとエプロンで手を拭いて食堂まで出てきてくれた。つくづく気の利く奴だなぁと感心する。


「あ、用ってほどじゃ…」

「?……あ。お昼ご飯はまだなんです、ごめんなさいっ」

「い、いや、ご飯を催促に来たわけでもないんだけど…」
ハッキリしない私の言葉にリーネは首を捻った。うーん、どう切り出せばいいんだ?
リーネは素直すぎてツンツンメガネみたいにからかったりしにくいんだよなぁ…。それに誰かにプレゼント渡すって言うのもあんまりしないって言うか…。


「えっと、その……なんだ……」
誕生日プレゼントを渡すって言えばいいだけなのに、言葉が出てこない。なんだか、こそばゆいんだよなぁ…。
リーネはこの隊にはあまりいないタイプっていうのかな?サーニャみたいに控え目で、それでいて芯はあってちょっと頑固で……。


「……エイラさん?」
顔を覗き込んでくるリーネに驚いて、思わず身を引いてしまい、何故か顔が熱くなった。


「あ、いや……こ、これ!」
私は慌ててリーネから距離をあけて、後ろ手に持っていた包みを押しつけた。強く握り締めていたからか、少し皺がついてしまった包みを受け取ったリーネは要領を得ないような表情で私と包みを見比べる。


「あ、あの…?」

「た、誕生日プレゼント!今日、リーネの誕生日だからなっ」

「え?」
キョトンとした顔のリーネ。私は無性に恥ずかしくて目を合わせられずに、キョロキョロしなが距離を少しずつ開けていった。


「そ、その、なんだ…」
徐々に嬉しそうに頬が緩んでくるリーネ。ダメだ、やっぱり目は合わせられない。
たかだかエプロンぐらいで、そんなに喜ばれるなんて思ってなかった私は言葉を継げなくてボソボソと呟くしかなかった。


「……お、おめでとう」

ちらりと伺い見たリーネはニコニコと微笑んでいた。






――――

リーネちゃん誕生日おめでとぉぉぉぉ!
エイラは好きな相手にはヘタれるものだと思ってます!ペリーヌは好きと言うよりからかいたいだけだからヘタレない。


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