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Title

§明日の君へ


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・D2で夜営中
・切ない系?
・カイジュカイ

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OK?














「ジューダスってさ。将来何になりたいとか、あるの?」




辺り一面真っ暗で。
気配と言えば、自分たちだけ。
パチパチと火がはぜる音だけが響く中。
ふと気になって、焚き火を囲むように斜め横に座る彼に聞いた。

今思えば、我ながら相当無神経な質問だったと思う。
ジューダスは、本当なら死んでいる人で。
エルレインに生き返らされたから存在しているけど、この先神を倒せばどうなるかわからない。

…いや、わからないわけ、ない。
リアラが言ってた。
神が消えれば、歴史は正しい流れに修復される。
そうなれば、リオンである筈のジューダスも―――。



でも、本当に単純に気になったんだ。

何でも出来て、いつも落ち着いてて、オレなんかよりずっと大人みたいなジューダスの、思う未来。

「……………」

火を見ているジューダスは、仮面の影にかくれて表情がよくわからなかった。
怒ってるのかな。
それとも、返事がないからもしかしたら寝てるのかもしれない。
そう思って、そっと寄ってみる。

「…ジューダス?」

寝ている皆はテントの中なんだから聞こえる筈もないんだけど。
何故だか小さな小さな声で、彼を呼んだ。



「……………英雄…」



「っ、え…?」




―――英雄?




「ジュ、ジューダスって英雄になりたかったの!?オレと一緒―――」

「馬鹿者。落ち着け、違う」



ふいにあがったテンションが、鋭い声で遮られた。



え、と視線を投げれば、彼はびっくりするくらいに穏やかに微笑んでいた。

そんな彼の綺麗な笑みが。

あまりにも儚くて。


「…っ!?……カイル…?」


オレはとっさにジューダスの手を掴んでその体を引き寄せていた。

「……どうしたんだ」

耳元で僅かな困惑を滲ませるその心地いい声に、気持ち悪いドキドキがほんの少し和らぐ。
でもまだ気持ち悪くて、ぎゅうと更に力を入れた。

「………………」

ジューダスは何も言わない。

パチパチと火がはぜる音だけが聞こえる。

どれくらいそうしていたかわからないけど、気づいたらジューダスがオレの背中を撫でてくれていた。
カラカラに乾いた喉から、声を絞り出す。

「…オレ……、ごめん…ジューダス…」

掠れた小さい声しか出なかったけど、ジューダスは聞き取ってくれたみたいだった。
呆れたようなため息をついて、ポンポンと背を叩く。

「……全く、小さな子供かお前は…」

「うん…うん、そうだよね…ほんとにごめん…」

「……………」

呆れたような態度をとっていても、その手が拒絶を表すことはなかった。

そのままどれくらいすぎたかわからなかったけど、パチパチと勢いよく火の粉を飛ばしていた焚き火が少し静かになろうとした時。

ため息をついたジューダスは、静かに、でもハッキリとオレの耳許で言った。




「英雄が英雄でいることが出来る、正しい歴史を取り戻すこと」




え、と身をひいてジューダスの顔を正面から見る。
まっすぐに向けられた曇りない瞳の中に、俺の姿がハッキリと映っていた。




「それが"ジューダス"たる僕の夢であり、目標。……カイルが開いてくれた"ジューダス"の未来だ」



「……ジューダス…」


いま、瞳に映っているのは紛れもなくオレだけど。
でも、きっとその瞳のもっと奥深くには、父さん達の姿が焼き付いてる。



「お前の"何になりたいか"という質問からは少し外れるが、僕の目指すところはただひとつだからな」



そう言ったジューダスは、やっぱり消えそうな位に綺麗に微笑んでいた。

普段は見せることがないこの笑顔を独り占めしているだけで、オレはきっと贅沢ものなんだろうな。
でも、やっぱり――…

「…ね、ジューダス。もう一回ぎゅってしてもいい…?」


触れたいよ。



「…ッ……馬鹿者、そういうことは返事を聞いてからにしろ」



もっと、一緒にいたい。



「うん。だってジューダスが逃げちゃいそうだったから」



ずっと、一緒に――…




「………」




この先の不安をこめて言った言葉に、ジューダスは返事をしてくれなかった。








本当に単純に気になったんだ。

何でも出来て、いつも落ち着いてて、オレなんかよりずっと大人みたいなジューダスの、思う未来。





その未来の中で、オレと一緒にいてくれる未来は無いのかな、って―――。





おわり





コメ頂けると嬉しいです。その際、何の話のコメかわかるようにして貰えると嬉しいです(^^)
  


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