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・《忘却ステラ》のシリーズ
・恐らくユリ(→)リオ(→)スタン
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どこか遠くを見ているなと視線を追うと、その先には必ずといっていいほど"奴"がいた。
時々"奴"の息子の方もみているものだから、最初は「金髪が好きなのか」とも思っていたのは今考えると笑えるものだ。
だから、そんな時おれは決まって声をかける。
「何みてんだよ、リオン」
ふと向けられた視線が、一瞬にして鋭いものになる。
それまでの切なそうな顔から凛とした表情になるのは嫌いじゃないけど、
(……なんだか、悔しい)
あまりひとつのものに対して執着したことがないから、こんな風に思わされてしまう事が凄く悔しかった。
だから、
「本当は"アイツ"のいる前で服をひんむいて、無茶苦茶に犯してやりたい…なんて思ってるって言ったら、お前はドン引きするんだろうな」
そう思っていたら、リオンが眉間の皺を濃くしてこっちを睨んできた。
「貴様は馬鹿か。声に出ているぞ」
「…あ、わりぃ」
……わざとなんだけどな。
そう言うと怒るから、言わないけど。
それでもやっぱり機嫌はそこねたようで、リオンは俺の首根っこを掴むと物陰に隠れるように押し込んだ。
――"奴"が、完全に見えなくなる。
「そんな下世話な事を日中から堂々と口にするな。お前はもう少しまともなやつだと思っていた」
「おほめにあずかりこうえいです」
「…貴様は喧嘩を売りたいようだな」
「怒るなよ。いーだろ、ギャップのある男っていうのも」
途中から、トーンを下げて耳元で囁く。
細い腰をグッと抱き寄せれば、リオンはやめろと身をよじった。
「放せ貴様っ、こんな所で――」
「俺は"貴様"なんて名前じゃない。名前で呼べっていつも言ってんだろ?」
「ふざけ、ッ――――!」
無理矢理顎をとらえて、その唇を塞いだ。
リオンは、こういうところが抜けてると思う。
自分を狙っている人間を、こんな狭い暗がりまでつれてきて、身を寄せてきて。
自覚が無いって恐ろしいなと思うけど、こういう所、嫌いじゃない。
「ッン、…やめっ…ろ!」
「やーだ。誘ってきたのはそっちだろ」
「誘ってなんかない!」
さっきとは逆転、今度は俺がリオンを壁に押し付ける。
ベルトを外して手を服の中に差し込むと、その体がびくりと震えた。
「はいはい、あんまり声だすと皆が何事かってきちゃうと思うけど?まだ近くにいるだろうし」
「――――っ!」
ハッとして口をつぐむ様子に、腹の中がもやつく。
いっそのことばれてしまえばいいのにと思わない訳じゃないけど、揺れる紫水晶を見ると庇護欲がかきたてられて、
「……あー…、やっぱり可愛いな」
「だから、貴様は余計なことを声に出すなと何度言ったら――」
「あ、声にでてた?わりぃわりぃ…」
そう笑って言いながら、下肢を纏うものを一気に引きずり落とした。
「っば、馬鹿か貴様!」
「"ユーリ"」
「やめろ…!こんな所で――」
「"ユーリ"だってば。ほら、呼んでみな?ちゃんと言えたら放してやるよ」
「………っ」
口をつぐむリオンの頬が赤く染まる。
意地を張って言えない所が素直じゃない。
「……っ、リ…」
「きこえね〜ぞ〜」
「……、……ユーリ…」
「――――」
「…ここでは…嫌だ…」
そんな屈辱的な顔ですがられても。
「…可愛いな、やっぱ」
むくりと起き上がる欲は増すばかりだけど、今回は見逃してやろうと思った。
(……さすがに、アイツに気付かれたら可哀想だからな)
でも、俺は聖人君子じゃない。
「じゃあ、後で俺の部屋にこいよ。続き…しようぜ?」
「―――…っ」
ぐい、と雄を押し付けると、リオンは顔を伏せた。
肯定も否定もしないが、否定しないということはリオンは必ず部屋にくる。
身だしなみを整えてやって、暗がりからポンと背を押した。
じゃあな、と手をひらつかせると、一瞬ムッとした顔をしたが何事もなかったように背を翻し光の中へと溶けていった。
暗闇に残ったのは俺だけ。
「……はは、まぶしー…」
太陽の光を浴びて輝く月をたぶらかす闇に、勝ち目なんてあるんだろうか。
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きっと、無い―……
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