怪盗あらわる!?
はち
「それで、どういった用件だったかしら?」
一息着いた頃、マモルさまから話を切り出した。
すると、祐巳の心臓が思い出したかのように活発に活動を始める。
「昨日も申しました通り、盗難事件について詳しく聞かせて下さい」
祐巳が震える声を抑えてそう告げると、マモルさまは紅茶を一口飲んだ後、ゆっくりとカップをテーブルに戻し、口を開いた。
しかし、マモルさまから出たのは祐巳たちを落胆させるのに十分なものだった。
「悪いけど、何度聞かれても答えは同じよ。教えることは何もないわ」
バンッ!
「どうしてですか!?」
由乃さんの我慢も限界だったのだろう。
テーブルを叩き、身を乗り出してマモルさまに詰め寄る。
その顔にはもう我慢できない!と書いてあり、今ここにテーブルが無かったら掴みかかっていきそうな勢いだ。
対するマモルさまはそんな由乃さんを気にする様子もなく、優雅に紅茶を飲んでいる。
「どこで聞いたのか知らないけど、ウチは一同好会よ。そんなこと調べているはずがないじゃない。噂ぐらいしか知らないわ。詳しく知りたいのなら新聞部に聞きに行くべきではなくて?」
あくまで白をきるマモルさまに由乃さんが反論しようとするが、それを妨げるようにマモルさまは続ける。
「仮にそうだとしても、部員でもないあなたたちに話すと思う?」
余程の理由がない限りはしないわね、と言いながら今度はクッキーに手を出している。
反論出来なかった。
由乃さんも言い返す言葉が思いつかなかったのだろう、悔しそうに唇を噛み席に着いた。
マモルさまの言うことは正論だ。
山百合会とは言え、部員でもない自分たちがいきなりやって来て情報をよこせとは、あまりに虫が良すぎる。
つまり、どうしても知りたいなら自分たちで調べるか、情報を持って来いということだろう。
しかし、祐巳たちは情報を持っていない。
噂ならいくつか知っているが、本当にマモルさまたちが調べているのならとっくに知っているであろうものばかりだ。
祐巳は必死に頭を働かせ、何とか捻り出そうとしたが、出てくるのはため息ばかりだった。
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