[携帯モード] [URL送信]

怪盗あらわる!?
なな


中は思っていたよりも広く、綺麗だった。
マモルさまの趣味だろうか、全体的にアンティークでおしゃれだ。

まず目に入ったのは、中央にある大きな楕円形のテーブル。
部屋の大半を占めており、焦げ茶の優しい色で、どこか心が落ち着く雰囲気がある。

入り口から見て左奥にはシンクがあり、今マモルさまがそこで紅茶の準備をしているようだ。
マモルさまは紅茶の研究をしていらっしゃるそうだし、楽しみだ。

そして反対側、右奥には棚が置かれている。
腰の辺りまでの高さのそれは全体的に黒く、2本の黄色いラインが入っている。
これだけが他のものと違っていて、場違いなように感じた。
棚には野球のユニフォームを着たぬいぐるみ、サイン入りの野球ボールにバッド……。
祐巳は目をそらし、見なかったことにした。


気を取り直し、中央のテーブルに視線を戻すと、そこには先客がいた。
祐巳はそのテーブルの椅子に座りながら、二人の少女を観察した。

祐巳の正面に座っている女の子は、ボーイッシュな髪型で目がパッチリと大きい。
身長は祐巳より小さそうだ。
隣のコに何かについて熱く語っている。
小久保が…とか、ホークスは…とか聞こえたのは気のせいだ、と思いたい。
先程の棚と同様に、なかったことにした。

その隣、祐巳から見て右斜め前の子は相槌を打ち、熱心に話を聞いている、と思ったがどうやら寝ているようだ。
ストレートのロングヘアに、赤い縁取りのメガネ。
俯いていてよくわからないが、細長い印象を受ける。
眠りは深いようで、祐巳たちが来たことにも気付かず眠っている。
座ったままで寝るとはなかなか器用な人だ。

祐巳がそんな感想を抱いていると、マモルさまが戻ってきた。


「オレンジ・ペコーにしてみたの。お口に合うかしら」


祐巳たちの前に紅茶が置かれた。
祐巳がいれる紅茶よりも遥かに美味しそうな香りがする。
一口飲むと、口の中いっぱいに香りが広がった。


美味しい。。。


いれる人が違うだけでこうも味が変わるのか。
これはぜひとも教えていただきたい。
そしてお姉さまに飲んで頂いて、それからそれから、、、



祐巳は周りの人々の反応に気付くことはなく、ニヤケ顔で紅茶を飲みながら一人妄想に耽っていた。
我に返ったのは、それからしばらく経ってからのことだった。





[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!