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怪盗あらわる!?
ろく


今、祐巳たちは万研究同好会の部室の前にいる。
令さまお手製のクッキーを持って。
祐巳は、食べたいのを我慢してここまで持って来た。
箱の中に入っているのに、美味しそうな香りが鼻を擽り、祐巳を弄ぶ。
一応、念のために中身を確認したが、焦げていることはなく、どれも狐色に焼けていて美味しそうだった。
それを見てホッと胸を撫で下ろしたのは言うまでもないだろう。(※拍手参照)

それは良かったのだが、祐巳たちは扉の前に着いてから一歩も動けずにいた。
端から見たらさぞ怪しい光景だろう。
三者三様に立ち尽くしているのだから。

右隣の由乃さんは一人息巻いている。
前回のことがよっぽど悔しかったのだろう、心なしか目がイッている気がする。

志摩子さんは志摩子さんで拳を握りしめ、目にも力が入っている。

かく言う祐巳も緊張していた。
前回断られたせいもあるのだが、お姉さまたちの話を聞いたために妙に体に力が入ってしまっていて、なかなかノックできずにいた。

しかし、ずっとここでこうしているわけにはいかない。
大きく息を吸い、深呼吸する。
祐巳は意を決し、ドキドキとうるさい心臓の音を意識しながら扉を叩いた。


「あら、またあなたたち?」


またも対応に出てきたのは式部マモルさまだった。
由乃さんはマモルさまの姿を見た瞬間、戦闘態勢に入った。
由乃さんが何か仕出かす前に、と祐巳は早口にまくしたてた。


「ご、ごきげんよう。昨日は突然の訪問失礼致しました。お詫びを兼ねてこちらを」


と、祐巳はラッピングされた箱を差し出した。
緊張のためか、顔が強張る。


「中身はクッキーです。お茶の時間にでもお召し上がり下さい」


祐巳がそう言った瞬間、マモルさまの目が輝いた…気がした。


「クッキー、ね。ダレに聞いたのかしら。まぁいいわ。好きなところに座って」


そう言うと、マモルさまはさっさと奥の方に入って行ってしまった。
けれど、三人はついて行こうとはせず、その場に立ち尽くしていた。

こうも簡単に敵中に入り込めるとは。
さっきまでの緊張は何だったんだ。


「どうしたの?早くお入りなさい」

「あっ、はい!失礼します」


マモルさまの言葉に促され、三人は慌てて中に入った。





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あきゅろす。
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