怪盗あらわる!?
いち
「う〜ん…どうしたものか」
今祐巳の頭を悩ませているのは、ここ最近起こっている盗難事件のことだ。
弁当箱やタオル、お菓子、体操着などの個人のものだけに止まらず、購買のパンなど様々なものが盗まれている。
最初は生徒のイタズラだろうと思われていたが、それが立て続けに…しかもランダムに行われるため学校中で噂になっている。
先生方もお手上げのようだ。
そのため、山百合会の一員である祐巳としては、何か良い案はないかとこうして薔薇の館に行きながら考えているのだ。
「う〜ん…」
唸りながら、館の扉を開けた。
そのまま2階に続く古い階段へと足を向ける。
ギシギシと言わせながら上っていると、話し声が聞こえてきた。
いつもなら山百合会のメンバーだろう、と気にしないのだが、今日は別だ。
3年生は進路説明会で遅くなるはずだし、
由乃さんは図書館に寄るから先に行ってて、と先ほど別れたばかり、
志摩子さんは委員会だし、
乃梨子ちゃんは掃除当番で遅くなると言っていた。
だから、今ここにいるのは祐巳だけのハズなのだ。
また1つ謎が増えたなぁ、と思いながら足を進める。
まぁ、扉を開ければ解決する話なのだが。
盗難事件のことばかり考えていたためか、何でも事件と思ってしまうようだ。
祐巳は気を取り直して部屋の扉を開けた。
「あっ祐巳ちゃん、ヤッホ〜」
中にいたのは聖さまだった。
イスに座り呑気に手を振ってくる。
しかも、1人ではなかった。
長いワンレングスの、肩まであるストレートヘア。
黒縁眼鏡の下の切れ長の目もとと、薄い唇が印象的な女性、加藤景さまその人だった。
以前、祐巳が濡れ鼠になっているところを助けてもらった。
「聖さま!?と、加藤さん!!どうされたんですか?」
「可愛い後輩の顔を見にね。祐巳ちゃん1人?」
「ええ、もう少ししたら来ると思いますけど」
「そっか〜。まいったな〜」
そう言うと、聖さまは苦笑いを浮かべながらテーブルの方に視線を向ける。
?を浮かべながらも、つられて祐巳も見る。
が、そこには何もなかった。
不思議そうに見ていた祐巳に気づいた聖さまは
「祐巳ちゃん。神隠しって信じる?」
と、真顔で言った。
ますます祐巳の頭の中が?でいっぱいになる。
また人をからかうつもりなのだろうか、この人は。
そこに見かねた加藤さんが助け舟を出してくれた。
「ふざけないの。祐巳ちゃんで遊ぶのも大概にしなさい」
冷たい視線とため息のおまけつきである。
加藤さんには適わないのか、聖さまは「はいはい」と言いながら説明してくれた。
それにしても人で遊ぶとは失礼な。
「ゴメン、ゴメン。拗ねないでよ祐巳ちゃん。」
そう言うと、聖さまは説明を始めた。
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