怪盗あらわる!?
きゅう
重い沈黙が流れる中、祐巳がもう帰るべきなのでは、と考え始めていたときのことだった。
ドタドタ…‥バンッ!!
足音が聞こえてきたかと思うが先か、勢いよくドアが開き、同時に女の子が飛び出してきた。
肩にかかるか、かからないかの長さの黒髪。
余程急いで来たのか、呼吸が荒い。
元気のよさそうな女の子だ。
祐巳はその子に見覚えがあった。
確か…
「葵、廊下を走ってはいけないと何度も言ってるでしょう?」
そう、日向葵さんだ。
万研究同好会だったのか。
葵さんは祐巳たちに気付いていないらしく、葵さんはキラキラと瞳を輝かせてマモルさまを見ている。
「ごめんなさい、お姉さま。でもそれどころじゃないんです!また盗難事件があったんですよ!!」
その言葉に祐巳たちは目を見張った。
それに対してマモルさまは呆れたようにため息をついた。
「それが今度は…」
「葵。お客様の前よ、落ち着きなさい」
マモルさまに言われて初めて祐巳たちに気付いたようで、慌てて「ごきげんよう」と挨拶を交わすと、葵さんはばつが悪そうに空いてる席に座った。
それを目で確認すると、マモルさまは話を続けた。
「とにかく、そういうことですからお引き取り下さい。」
「ちょっと待って下さい。今葵さんが言っていたのは最近の盗難事件のことでしょう?やっぱり調べているんじゃないですか!?」
「葵は噂を持って来ただけだわ。そうでしょ葵?」
バチバチと火花が散る。
葵さんは話を振られ、困ったように首を傾げながらも頷いた。
由乃さんが葵さんを睨む。
「さっきも言ったでしょ。もしそうだとしても、部員でもないあなたたちに教えることは何もない、って」
「余程の理由がない限り、でしょう?もし、私たちが関係者だって言ったら?」
ニヤリと笑う。
こうなった由乃さんを止めることなどできない。
両者の間に火花が散る。
永遠に続くと思われたそれは、意外にもマモルさまのため息によってあっさりと幕を閉じた。
勝者は由乃さんだ。
「はぁ、仕方ないわね。いいでしょう、あなたたちに情報を提供するわ。ただし、明日ね」
「明日?」
まさか、なかったことにする気じゃないでしょうね!?と由乃さんの瞳が語っている。
「こちらにも準備というものがあるの。安心しなさい。また追い返したりはしないから。クッキーの分は働くわ」
「わかりました。また明日改めて伺います」
行きましょ、という志摩子さんの言葉に従いその場を後にした。
最初はどうなることかと思ったが、何とかなりそうだ。
祐巳は何か大きなことをやり遂げたような、清々しい気分で帰路についた。
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