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 焔爾が血を好むように鬼の子である六花にも人喰いの本能がある。それは血肉を喰らう傾向が高い男鬼に対して精気や魂気を糧にする女鬼の性分であるが、彼女は男の精を得て鬼としての飢えを満たしている。

 いつもは彼に血をやって、代わりに彼女は精気を喰む、六花にとって焔爾に抱かれるのは自らを満たす行為だ。それを今更、拒む理由などない───────


「抱かれたいか」

「、」

 否定も肯定もない沈黙が都合良く解釈されるのは古今東西世の常、と、焔爾は抵抗しない痩躯を容易く抱き寄せた。

「…抱いてやるよ」

「───────あ…」

 ぶつかりそうな距離で猩々緋と薄紅の眼球が互いを映す。伏せる間も惜しむように噛み付いた唇からやはり抗いの言葉はなく、久方ぶりの接吻けに彼女もうっとりと、溺れる道を選んだ。

 胡座を掻いた彼の膝に身体を預け、首元へ腕を回して縋り付けば舌を絡める行為に没頭出来る。
 結ぶように擦り合わせられる舌は間断なく口腔をなぶり、息継ぐ暇すら許さないとばかりに肉襞の溝を舐め上げられれば、髄を震わせる快感を味わえる。

 もっと濃く、深い角度で。それを望んで更に身を寄せれば、彼はくつりと小さく嗤った。
   こ れ
「…接吻が一番好きだろう、お前」

 舌を繋ぐ糸が途切れぽたりと唇を伝って垂れる、舌なめずりする焔爾の表情は愉悦が滲み、いやらしく縋る彼女の様を心底愉しんでいる。

 六花が初めて焔爾に抱かれたのは、まだ彼の元に下る前の頃。思えば随分と長い付き合いになるのだと驚くと同時に呆れ返る。
 千年の時を過ごし、言葉を交わし、身体を重ねて尚、未だ彼女は彼と全く反りが合わないと思う事の方が多い。

 例えを挙げてはきりがない程六花と焔爾には感覚の隔たりが深く存在し、それは互いに永劫埋められはしない。
 それでも、彼女は自分の処女を奪った男に数百年を経た今も抱かれている。

「あ、も…早く…早く」

「堪え性のない奴だな、まだ、やらねぇよ?」
 なぶ
 嬲るつもり満々の焔爾に頬ずりするように顔を寄せてねだるも、彼はしれっとした風情で、さぁいたぶってやろうと殊更丁寧に帯を解く。

 …こういう時こそ合わないと感じるのは確かだ。

「んっ…」

 乳房の形を指先でなぞりながらわざとらしく乳頭を掠めて、期待を擽っては逸らされる小さな快感の冗長。
 このじわりじわりと神経を嬲る彼のやり方が、好きになれない。

「っ…焔爾…」

 乱暴そうに見えて、意外にも焔爾の抱き方は酷く緩慢に性感を煽りながら焦らす、まどろっこしい物で。
 もっと何も考えずにいられるような激しさで溺れたいのに、彼は此方の羞恥心を消してしまわぬ緩やかな快楽を燻らせ、それに悶える恥態を愉しむのだ。

 趣味が悪い、もう厭だこの男、どうして弄ぶ術にやたら長けてるのか。ぶつけてやりたい文句すら、彼の舌に転がされ無闇に蕩けた嬌声になって抜けてしまう。

「ひゃ…ぁん…」

 普段は髪に隠れている首筋を耳朶までぬとりと舐め上げられ、悲鳴が堪えられない。
 一番弱い性感帯を丁寧にチロチロと刺激される度、身体はびくりと震えが走って熱く火照った。

 反応の好さに気を良くしたのか、やっと直に胸を揉みしだかれる。すっかり硬く実り色付いた乳首を転がされ、爪先で擦り合わせられる毎に膣の中がひくりと淡く痺れた。

「ふあ、やっ…」

 項まで彼の鼻先で擽られ、また一段と甘やかな声が跳ねる。こんな風に素直に声を聞かせるようになるまでどれだけ時を費やしたか…思い返し、焔爾はゆるりと笑みを深めた。




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