遭遇二組前



「さぁさぁ行きますよ兵衛くん!貴方に選択肢なぞ存在せんのですうひひ!」

「うぇぇぇぇ!?」

 とにかく押しの一手が有効だと早々に見抜かれた兵衛は、抜群の苛めっ子オーラ…もとい押しの気迫を発揮するゆきるに流され切っていた。
 これは不味かろうと島谷が苦心していた折、空のゴミ箱を手に帰還した大地に島谷は一縷の希望、と救いを求める。

「あっ 大地ー!お前この子の知り合いだって?」

「げっ」

 何とかしてくれの意を込めた島谷も、大地の返した極僅かな…しかしありありと苦々しさの浮かんだ顔を見て、ああこりゃ無理だと即断した。
 彼女は恐らく天災のような物だと見切りを付け、島谷は一歩集団から距離を置く事にする。

「ああ岡山くん、良いタイミングですね相変わらず!」

「最悪だ…どうしてこう俺はタイミングが悪い…」

「大地くーんお兄ちゃん今大地くんの友達と親交を深めてたんだけどさぁ、この子オモロイね!」

「まぁ岡山くんのお兄さんたら〜」

 きゃいきゃいと色めく兄と知己に大地はうんざりした双眸を向け、島谷は最早打つ手なしと踵を返した。

「何このテンション何このカオスorヘルな空間…オレもう疲れたから部活行くわ、頑張れ大地、兵衛」

「しっ 島谷くんんんっ」

「超頑張れアディオス〜」

 爽やかな笑顔で足早にフェードアウトして行く友人に兵衛の手が虚しく宙を掻く。要領良く嵐の被害と余波を躱した島谷に怒りを燃やし、大地は拳を震わせる。

「野郎逃げやがった…!というよりこの悪夢的カオスorヘルな事態の経緯を簡潔に説明出来るか兵衛」

「むっ 無理です!」
「だろうな」

 双方鮮やかな即答であった。

「あはっ 兵衛くんを委員会にヘッドハンティングしただけでしてよ岡山くん」

「うぜぇなゆきる…何だそのテンション」

「おや酷い、少しはお兄さんを見習ったらいかがですか岡山くん。岡山くんのお兄さんはなかなかに面白い方ですよ」

「いやぁゆっきーには負けちゃうぜ!良かったな大地くん良い友達がいてー」

「黙れ大気それ以上無駄口叩くな」

「冷遇にも程があるよね大地くん!」

「何カリカリしてるんです岡山くん?まあ良いです兄弟間の確執とか別に興味ないし。さあ行きますよ兵衛くん岡山くん!」

「や、やっぱり行かないと駄目ですか…」

 ずいずいと押しに押し切られたが最後、兵衛の進級一年間…或いはそれ以降もの長きに渡る生活は、こうして岐路を迎える事となる。

「ダルい…」

「それじゃ岡山くんのお兄さんごきげんようー」

「おーうじゃな〜」





(厄日だ)

(あんなに良いお兄さんなのに何故突っ張ってるんです岡山くん)

(黙れゆきる)

(まあまあ二人共…)



そして交された縁が生まれる

兵衛くん苦労人ポジ確定。



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あきゅろす。
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